裁判員制における市民-専門家の異質性の融和 : 社会心理学的考察(<特集>市民と法律家のコミュニケーション)
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概要
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裁判員制の基本的な発想は、法的専門性の高い裁判官の判断に対して一般市民の世間知を融合させるべく、裁判官と市民を一緒に審理させようというものである。このことは、異質性の高い両者が一緒に審理することで、自然に相補的に機能しうるという大前提にもとついている。本論文の目的は、この大前提の社会心理学的成立要件を明らかにすることである。これまでの社会心理学的研究では、成員間の異質性が高いことは集団が強くなるための一つの条件であるとされてきたが、同時に成員間の葛藤や誤解を高める傾向があることも知られている。裁判員制でもこのような誤解や葛藤は十分生じうる。真に円滑なコミュニケーションがとれるためには、裁判官が日常用語で法的コミュニケーションを行うこと、市民の目線に自分をあわせるよう心がけること、市民が早期から法教育を受けること、相互尊重的関係が維持されることが重要であることを指摘した。相互尊重的関係があることにより、相互の異質性は葛藤を乗り越えて相補的関係を促進しうる。さらに、裁判官と裁判員の人数比は1対3程度が望ましいこと、裁判員だけで審理するセッションを設けるなどの、審理手続きに関して検討されていないオプションが豊富にあること、裁判官に聞きづらい裁判員の疑問点について、法と心理学会員がオンラインで相談活動を行うなど、常時疑問解決に役立つサポータ一が必要であること、などを指摘した。
著者
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