神経性食欲不振症におけるアディポネクチン3分画の検討(摂食障害の治療の進歩,2012年,第53回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(鹿児島))
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概要
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背景と目的:摂食障害(神経性食欲不振症および神経性過食症)は欧米のみならず,本邦においても思春期女性を中心に増加傾向が認められている.摂食障害は多元的な発症因子をもち,その病態生理においては明確な知見が得られていない.脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは,肥満者においてはその血中濃度が低く,アディポネクチンの低下は2型糖尿病や心血管疾患の発症と関連が深いといわれている.最近,アディポネクチンは生体内において多量体構造(高分子量:HMW,中分子量:MMW,低分子量:LMW)をとって存在し,これらが体重増減に関して相反する機能をもっていることが明らかとなった.今回,われわれは神経性食欲不振症におけるアディポネクチン各分画を測定し,その役割についての検討を行った.症例と方法:女性の神経性食欲不振症(AN)患者9名および年齢と身長を合わせた健常者9名において血中のアディポネクチン3分画を測定した.結果:アディポネクチン総量に対するHMWの割合(%HMW)およびLMWの割合(%LMW)はAN群において有意に高値を示した.2群をあわせた18名において,BMIに対して%HMWは正の相関を,%LMWは負の相関を認めた.また,摂食障害調査票(EDI-2)において,HMW,%HMWおよびLMWは「社会的不安感」と強い正の相関を示し,LMWは「衝動の制御」と強い正の相関を示した.さらにモーズレイ強迫神経症質問紙(MOCI)において,%HMWは「洗浄」と強い正の相関を示した.考察:アディポネクチンのHMWとLMWの血中濃度はANにおいて,低栄養に応じた反応をしているものと考えられた.また,心理テストとの関連を加味すると,アディポネクチン各分画は,摂食障害患者の摂食行動と精神病理において異なった役割を果たしていると推測され,ANをはじめとする体重異常を呈する疾患においては,アディポネクチンはその総量に加え,各分画を経時的に評価する必要があると考えられた.
- 2013-09-01
著者
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網谷 東方
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科社会・行動医学講座行動医学分野
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乾 明夫
鹿児島大学大学院心身内科学:鹿児島大学病院心身医療科
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乾 明夫
鹿児島大学 心身医療科
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浅川 明弘
京都大学 院 農 食品生物
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網谷 東方
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学分野:鹿児島大学病院心身医療科
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乾 明夫
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学分野
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浅川 明弘
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学
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網谷 東方
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学分野
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浅川 明弘
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院心身医療科:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科健康科学専攻社会行動医学講座心身内科学分野
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網谷 東方
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院心身医療科:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科健康科学専攻社会行動医学講座心身内科学分野
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