桜島火山および姶良カルデラ地域における61ka以降のマグマ化学組成の時間変化とマグマ溜りシステムの進化(<特集>桜島火山)
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概要
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桜島火山および姶良カルデラ地域における61ka以降のマグマ化学組成の時間変化とマグマ溜りシステムの進化について噴出物の全岩化学組成に基づいて検討した.61ka以降桜島火山および姶良カルデラ地域のマグマは,(1)マントル起源の玄武岩質および玄武岩質安山岩質マグマ,(2)地殻起源の流紋岩質および高シリカ流紋岩質マグマ,(3)デイサイト質マグマ,(4)マグマ混合によって形成された安山岩質マグマ,の4グループに分けられる.姶良カルデラ地域では,61ka頃に玄武岩質,玄武岩質安山岩質,安山岩質そして流紋岩質マグマの活動があり,敷根安山岩や安山岩質スコリアおよび流紋岩質軽石からなる岩戸火砕流堆積物が噴出した.24,000年ほどの静穏期の後に流紋岩質マグマの活動が再開し,29kaには大量の高シリカ流紋岩質マグマが噴出して,大隅降下軽石堆積物および入戸火砕流堆積物が形成された.60kaの岩戸火砕流堆積物の流紋岩質マグマと,29kaの大隅降下軽石堆積物および入戸火砕流堆積物の高シリカ流紋岩質マグマは同源と考えられ,前者の結晶分化作用によって後者が形成されたと考えられる.姶良カルデラ地域では30,000年余りの期間にわたって,流紋岩質〜高シリカ流紋岩質からなるマグマ溜りが長期に安定であったものと推定される.3,000年余りの静穏期の後,桜島火山の活動が26kaに開始された.13.8kaには姶良カルデラ内で燃島軽石の海底噴火が生じたが,これは桜島火山とは別のマグマ溜りシステムからもたらされたものと考えられる.桜島火山のマグマ溜りシステムは,高Ti-Pタイプおよび低Ti-Pタイプのデイサイト質および安山岩質マグマからなる.このうちの安山岩質マグマは,玄武岩質〜玄武岩質安山岩質マグマと高Ti-Pタイプおよび低Ti-Pタイプのデイサイト質マグマのマグマ混合によって形成された.低Ti-Pタイプのマグマ溜りシステムは14kaから4kaに活動的であり,全岩化学組成からは少なくとも3つのサブシステムからなる.8世紀以降の歴史時代噴出物は高Ti-Pタイプであり,全岩化学組成からは3つのサブシステムからなるが,最新のものは1779年ADの安永海底噴火以降に噴出したものである.桜島火山のそれぞれのマグマ溜りシステムの持続時間は数100年から数1,000年程度と短い.
- 2013-03-29
著者
-
味喜 大介
京大・防災研
-
味喜 大介
京都大学防災研究所附属火山活勤研究センター
-
小林 哲夫
鹿児島大学
-
川俣 博史
茨城大理
-
大槻 明
日大文理
-
迫 寿
茨城大理
-
高橋 正樹
Department of Chemistry and Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Niigata University
-
小林 哲夫
Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University
-
味喜 大介
Sakurajima Volcano Research Center, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
-
大槻 明
Graduate School of Integrated Basic Sciences, Nihon University
-
石原 和弘
Sakurajima Volcano Research Center, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
-
安井 真也
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University
-
小林 哲夫
Graduate School of Science and Technology, Kagoshima University
-
金丸 龍夫
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University
-
高橋 正樹
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University
-
川俣 博史
Department of Earth Sciences, Faculty of Science, Ibaraki University
-
大塚 匡
Graduate School of Science and Technology, Ibaraki University
-
迫 寿
Graduate School of Science and Technology, Ibaraki University
-
小林 哲夫
鹿児島大
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