桜島火山の大規模噴火における火口近傍プロセスの比較研究 : 安永噴火と大正噴火(<特集>桜島火山)
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概要
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桜島火山の歴史時代の大規模噴火である安永噴火(1779-1782年)と大正噴火(1914-1915年)の噴出物の岩相や層序,地形,噴火当時の記録を比較した.両噴火では山頂をはさんだ両測山腹で割れ目火口列が活動した.割れ目の推定の長さは大正噴火で約2.3km,安永噴火では5kmに及ぶ.噴火開始後数10時間の大正噴火と安永噴火の噴火様式は共通しており,プリニー式噴煙柱から火口近傍への大量の火砕物降下により斜面上に火砕丘を形成しながら火砕成溶岩をもたらした.引き続く数週間には両噴火とも溶岩流出が繰返されて溶岩原が形成された.その後は,大正噴火が陸上での溶岩流出を主としたのに対し,安永噴火では北東沖で海底噴火が起きて安永諸島を形成した点で大きく異なる.両噴火とも噴火初期に割れ目火口近傍へ著しい火砕物降下があることが特徴的である.これは火山体形成の観点からは,両噴火では山頂部の地形変化はほどんどないが,山腹斜面が成長したことを意味する.また桜島の大規模噴火の減災という観点では,居住地域近くまで到達しうる割れ目火口の活動への迅速な初期対応の重要性を示している.
- 2013-03-29
著者
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味喜 大介
京大・防災研
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味喜 大介
京都大学防災研究所附属火山活勤研究センター
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島田 純
日大文理
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高橋 正樹
Department of Chemistry and Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Niigata University
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味喜 大介
Sakurajima Volcano Research Center, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
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島田 純
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University
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安井 真也
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University
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