東日本大震災後の健康安全・危機管理研究の再構築
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概要
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東日本大震災を踏まえて,健康安全・危機管理研究の全体の方向性や重点的に推進すべき研究テーマを検討した.震災前に実施した学識経験者を対象とした面接調査において,研究全体の方向性として「包括的・総合的な新しい研究アプローチの開発」と「健康危機の予防」,研究全体に共通する要素として「情報」が抽出されたが,これらは震災後においても適用可能であり,さらに重点的に推進すべきものであることが示唆された.「情報」に関しては,平常時・危機発生時を想定したネットワーク(保健所等の組織,保健・医療・福祉等のセクター,各種連携システム)の中を「情報が流れる」という側面と,それらのネットワークを超えて「情報を始める」という側面が抽出された.「包括的・総合的な新しい研究アプローチの開発」に関しては,今回の震災の影響が健康,生活様式,経済,環境など広範囲にわたるものであることから,数多くの組織,セクター,学問分野の間の「つながり」を促進する必要があり,そのためは「情報を始める」ことが不可欠となる.「健康危機の予防」に関しては,今回の震災の影響が長期間に及ぶことが予想されることから,過去及び現在発生した健康危機事象が将来に及ぼす影響を「先取り」する必要がある.また震災それ自体の予防は困難であったが,その被害を予防する方策が可能な部分もあったことから,将来発生しうる健康危機とそれによる健康問題を「先取り」した予防研究が必要である.健康危機の「先取り」を行うにあたっては,「世界のあらゆる事象が健康への脅威となりうる」ことを前提として,それらの潜在的なリスクとベネフィットのバランスを包括的・総合的に評価する必要がある.包括的・総合的な新しい研究アプローチの開発(システム・ネットワーク間の「つながり」)と健康危機の予防(時間的な「先取り」)を座標とした「健康安全・危機管理研究空間」を設定した.この空間にこれまでの研究テーマを「配置」することによって現在の研究動向を明確にすると同時に,満たされていない空間に重点的に推進すべき研究テーマ(リスクサーベイランス,経験・ノウハウの伝承,地域住民の健康危機に対する意識と潜在能力,新技術の応用・実用化,近代的な科学技術・行動様式のリスク・ベネフィット,グローバルな環境変化に対応するローカルな対策)を「充填」することによって研究空間全体を網羅する研究テーマ群を提示した.
- 2011-12-00
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