放線菌キチナーゼ遺伝子の構造とその発現

概要

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キチンを分解するキチナーゼは,自然界における物質循環に関わる重要な酵素であるばかりでなく,植物の生体防御物質としても中心的な役割を果たしており,その農業分野での利用が期待されている。特に,土壌における主たるキチナーゼ生産微生物である放線菌は,複数のしかも基質特異性の異なるキチナーゼを生産することから,近年着目されてきた。我々は放線菌S. lividans由来の三つのキチナーゼ遺伝子を単離し,その構造を解析すると同時に,その発現制御に関する研究を行ってきた。その結果,S. lividansの三つのキチナーゼは,複数の機能ドメインからなるマルチドメイン構造を有していることが明らかとなり,分子進化,および遺伝子進化を考える上で興味深い知見が得られた。また,それぞれのキチナーゼ遺伝子のプロモーター領域には,他の放線菌キチナーゼ遺伝子の発現制御に関与することが知られている12bpのダイレクトリピート配列が見出された。放線菌のキチナーゼ遺伝子の発現制御は,土壌微生物の遺伝子の発現制御のメカニズムを分子レベルで解析するための格好のモデル系と考えられることから,今後詳細な検討を行っていきたい。
日本土壌微生物学会の論文
1994-03-01