昆虫脳における運動司令生成のための神経回路の推定

概要

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神経回路の機能的結合を,回路を構成する各細胞の解剖学的形態と刺激生理応答から推定する試みを紹介する.微小脳ながら環境への適応行動を示す昆虫の脳に注目し,ここでは,フォロモン源定位のための定型化行動で知られる雄カイコガを対象とした.行動司令は前運動中枢で発現することが知られており,さらに,前運動中枢を構成する主要な神経細胞に対して,個々の詳細な三次元形態や刺激受容後の生理応答が実験的に得られている.しかし,形態的に得られる細胞間結合を用いて神経回路を構成しても,各神経細胞の生理応答は再現できない.そこで本報告では,形態的結合を拘束条件とし,各細胞の生理応答を最もよく再現する結合を求める最適化問題を設定し,その解として,行動司令発現時の回路における機能的結合を求めた.特に,前運動中枢が複数のニューロパイル領域から構成されていることを利用して,最適化問題を階層型人工ニューラルネットワークの学習課題として表現し,誤差逆伝播法により結合強度を求めた.さらに,得られた結合を用いて神経回路を構成し,シミュレーションによりその妥当性を検証した.
2011-12-13