幼児におけるナラティブの結束性の発達 : ケーキ作り経験に関する報告の分析を通して
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概要
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本研究では,直前の経験に関する3〜6歳の幼児の語りを分析し,ナラティブ構造の発達について検討した。実験者と幼児でケーキを作り,ケーキ作りの経験を母親に報告するという場面を設定した。ケーキ作りの過程には,実験者が卵を落とす等のハプニングを含めた。報告場面のナラティブを結束性という観点から分析した。3歳では自発的に連続して述べる出来事の数が少なかった。4歳では多くの出来事を時間的に結びつけて語るようになった。5,6歳では,特にハプニングを含む出来事を因果関係で結びつけたり,意図的状態と関連させて語るようになった。これらの結果から,4歳頃に時系列性が,5歳頃に主観的視点からの意味づけが,ナラティブ構造に現れることが明らかにされた。異なる文化圏を対象とした先行研究においても類似した結果が示されており,何らかの共通した背景の存在が示唆された。また本研究で示されたナラティブ構造の発達的変化と自他理解の発達の関連が示唆され,今後の検討課題として提起された。
- 2012-03-20
著者
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