上部体幹前傾に伴う絶対座標上の肩甲骨アライメントについて : 肩甲骨面上での肩甲骨下方回旋に着目して
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概要
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上肢拳上に伴う肩甲骨の運動には種々の報告があり、その中でもCodmanの肩甲上腕リズム(scapulo-humeral rhythm)はよく知られる. 肩甲骨は胸郭表面に位置するため、絶対座標上の肩甲骨アライメントは体幹肢位に影響を受ける. この肩甲骨アライメントの変化は肩甲骨と上腕の相対的関節角度にも影響を与える. それは烏口上腕靱帯や関節上腕靱帯による肩甲上腕関節の支持性にも影響を及ぼすことになり、肩甲上腕関節の支持性の減少は肩関節痛や肩関節周囲炎に関係することが考えられる. それにも拘わらず体幹肢位と肩甲骨アライメントの関係を明らかにした報告は見当たらない. 本研究の目的は、体幹肢位が絶対座標上の肩甲骨アライメントに与える影響を明らかにし、肩関節痛や肩関節周囲炎に関係すると考えられる肩甲上腕関節の支持性の変化を解明する基礎研究とすることである. 体幹肢位と肩甲骨アライメントの関係を測定するために、チルトテーブル上で腹臥位を取らせた被験者の上肢をチルトテーブル端より下垂させ、更にチルトテーブル角度を変化させることにより上部体幹に傾斜を与えた. それらの肢位における絶対座標上の肩甲骨アライメントを、ビデオ式三次元動作解析装置ToMoCo-VM(東総システム社製)を用いて計測した. その結果、肩甲骨面上における肩甲骨下方回旋角度は体幹垂直位に比較して、体幹10°前傾位では0.69±4.98°、体幹20°前傾位では5.44±5.16°、体幹30°前傾位では11.74±5.42°、体幹40°前傾位では16.70±5.31°、体幹50°前傾位では22.03±5.19°であり、上部体幹前傾角度の増加に従い、肩甲骨は絶対座標上で下方回旋方向へとアライメントを変化させることが示唆された. また、上部体幹前傾姿勢により生じた絶対座標上の肩甲骨下方回旋は、関節包外側部や烏口上腕靱帯の支持を減少させる可能性も考えられた.
著者
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宮本 靖
四條畷学園大学リハビリテーション学部
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川崎 純
四條畷学園大学リハビリテーション学部
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川勝 香菜
四條畷学園大学リハビリテーション学部理学療法学専攻
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北川 智美
大阪物療専門学校理学療法学科
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川崎 純
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 理学療法学専攻
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