奥日光・奥鬼怒地方冷温帯林における種組成・構造の南北斜面間での差異
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概要
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1.太平洋側から日本海側への移行域である奥日光・奥鬼怒地方の冷温帯林で,南北斜面間の違いに注目して,種組成および林分構造の調査を行った. 2.高木層に出現した種を用いてTWINSPAN法で分類した結果,コメツガ林型,ブナ林型,ミズナラ林型の3タイプの林冠型に分けられた.コメツガ林型は奥日光の北向斜面に,ミズナラ林型は奥日光・奥鬼怒の南向斜面に多くみられた.ブナ林型は全ての斜面タイプにみられたが,やや北向斜面に多く現れる傾向があった. 3.主要な林冠構政樹種の出現パターンとして,(1)ミズナラは南向斜面の亜高木層以上に出現し,北向斜面には実生以外はほとんど出現しないこと,(2)ブナは全斜面タイプの多くの階層に出現すること,(3)コメツガは奥鬼怒にはほとんど出現せず,奥日光では多くの階層に出現し,とくに奥日光の北向斜面では全階層に出現すること,(4)ウラジロモミは両地域の南向斜面に多くみられるが,奥鬼怒の亜高木層以上にはほとんど出現せず,奥日光でも林冠での優占は少ないことが明かとなった. 4.斜面タイプごとに出現種の常在度を比較した結果,各地域,各斜面タイプごとに特徴的な種群が認められた.奥日光では太平洋側に特徴的な種が多く含まれ,逆に奥鬼怒では日本海側に特徴的な種が多かった.また,両地域において,日本海側に特徴的な種は南面斜面よりも北向斜面に多く含まれた. 5.林冠型の分布および主要林冠構成樹種の出現パターンの違いから,コメツガ林は奥日光の北向斜面に特徴的に現れ,ミズナラ林とブナ林はより広域的に南北斜面間ですみわけている可能性があると考えられた. 6.比較的乾燥すると考えられる南向斜面にミズナラ林が卓越し,雪の保護を受けると考えられる北向斜面にブナ林が多くみられること,さらに,太平洋側から日本海側にかけての主な環境傾度が積雪量であることから,このような移行域では,北向斜面はより日本海型の,南向斜面はより太平洋型(あるいは内陸型)の微環境をもたらすと考えられた.
- 植生学会の論文
- 1997-12-25
著者
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