大学における産学共同クレジット授業の試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
わが国の大学におけるクレジット教育は社会の要求とは程遠い状況にある。この状況に少しでも風穴を開けるため、筆者らは田園調布学園大学の一般教養科目である世界経済講義の中で、アコム(株)広報部と産学協同でクレジット教育を行った。ただし、このクレジット教育は元々正規のカリキュラムに含まれていなかった関係で、割り当てられた授業は1時間にすぎなかった。教育が、相手の行動様式の持続的変容をねらいとする意図的・計画的な活動、であるとすれば、たった1回の講義で実現できる教育効果は限られている。このため、筆者らは講義の目的を、将来への発展的学習すなわち生涯学習へとつなげるための「動機づけ」、という一点に絞り、それに基づきABG授業モデルを作った。このモデルに基づくABG授業は2002年10月24日に実施された。講義の直後、学生たちに授業の感想を求めたところ、クレジットの仕組みや危険性について有益な話を聞くことができた、といった好意的な反応が返ってきた。これでABG授業が学生たちの情意的側面に好ましい刺激を与えたということが確認された。筆者らはさらに、この授業が学生たちの認識的側面にどの程度の教育効果を与えたのかを確かめるため、3週間後と6週間後にアンケート調査を実施した。アンケートは全体で138名の学生に対して行ったが、そのうちの70名がABG授業の聴講者で、残りの68名は非聴講者であった。結論は、一口で言えば、受講者と非受講者の間に認識上の差は、1件の例外を除いて、認められなかった。この事実は、1回の授業で教育効果を出すことがいかに難しいかということを示している。しかし、今日、学習というものが生涯を通して行われる、ということを前提に考えると、今回のABG授業が学生たちにクレジット問題の重要性や危険性に気づかせ、生涯学習への動機づけを行ったという点で、一石を投じたと言うことができよう。
- 2003-08-08
著者
関連論文
- エンパワーメントによる経営学講義の活性化 : 「知のプル原理」と小集団組織学習に基づく実験
- イントラネット活用創発型e遠隔授業 : 国際経営論集中講義における実験
- グループ学習方式による講義の原理と有効性 : 「生命知としての場の理論」と講義経営
- 大学における産学共同クレジット授業の試み
- 8 ISO・カイゼン統合型品質経営システムの検討^[○!R] : グローバル競争優位の強化へ(21世紀の経営教育)
- BFSタイヤリコール事件の交渉論的考察 : 2001年前期国際交渉論講義テーマ
- 第10章 グループ学習方式による経営学講義 : 学習パフォーマンスと要因分析(大学授業の自己改善法-1999年度 授業改善の実践報告-,メディアを活用した学習方法の最適化に関する研究開発)
- ホリスティック・パラダイムによる国際経営教育 : 「グローバルズ」教育実験の報告