腸腰筋膿瘍を合併したACTH依存性Cushing症候群の疑い例

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75歳女性。55歳より糖尿病に対して内服加療を受けており、最近の血糖はグリメピリド1mg内服下でHbA1c 6%程度であった。1ヵ月前より食欲不振が出現し、2週間前より意識障害を認めたため前医へ入院となった。入院時の検査で随時血糖287 mg/dlと高血糖を認め、ACTH 339 pg/ml、コルチゾール158.8 g/dlと著明高値であり、ACTH依存性Cushing症候群を疑われ精査加療目的に当院へ転院となった。メチラポンの投与を開始したところ2週間後にはコルチゾールは正常化し、それとともに意識障害や高血糖も改善した。メチラポン投与中止後もコルチゾールは正常であり、デキサメサゾン抑制試験でも正常反応であったが、コルチゾールの日内変動は消失しており軽度のコルチゾール過剰分泌は持続していると考えた。高コルチゾール高値の原因としてMRIでは下垂体に腫瘍を認めず、異所性ACTH産生腫瘍を疑い施行した胸腹部CTでも腫瘍を認めなかった。しかし偶発的に左腸腰筋内に周囲に造影効果のある2cm大の腫瘤を認め、腸腰筋膿瘍と診断した。発熱・疼痛・CRP上昇などの活動性の炎症所見を認めないことから、切開排膿術や抗生剤投与を行わず経過観察したところ、膿瘍は縮小した。腸腰筋膿瘍は長期ステロイド投与例や糖尿病、肝硬変等の易感染性を基礎に発症することが多いとされる。Cushing症候群では高コルチゾール血症とそれに伴う高血糖により感染症合併リスクが高いが、ステロイド過剰状態のため発熱などの症状がマスクされやすい。このことからCushing症候群の診療では全身の感染症を念頭に置いた検査・治療が重要であると考えた。
2010-07-25

腸腰筋膿瘍を合併したACTH依存性Cushing症候群の疑い例

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