急速な頸部腫大を認め食道癌の頸部転移との鑑別が困難であった甲状腺未分化癌の1例

概要

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症例は66歳、女性。2008年4月左頚部に有痛性の腫瘤を自覚、急速な増大ありA病院にて頚胸部CT、上部消化管内視鏡検査を施行、生検にて食道癌、および頚部リンパ節転移と診断された。その後も頚部の腫大が増悪し、食道癌の転移としては非典型的な経過であったため原因精査目的に5月当科に紹介受診となった。前頚部に約6cmの硬い腫瘤を触知し甲状腺超音波検査で左葉を占拠する直径6cmの辺縁比較的明瞭で内部エコーレベル低く一部石灰化を伴う腫瘤性病変を認めた。頚部CTでは食道癌の上方進展および胸腔内リンパ節転移を認め、また気管は頚部腫瘤の圧排で右方に偏位していた。頚部腫瘤の鑑別目的にて甲状腺の穿刺細胞診および生検を行った。病理所見にて甲状腺の腫瘍細胞は扁平上皮構造を有した食道癌とは形態が異なり細胞質がやや淡明な異型細胞であり、食道癌の転移ではなく甲状腺未分化癌と診断された。根治的治療は困難であり窒息を防ぐ目的で気管ステント留置を行い外来で経過観察方針となった。食道癌、甲状腺未分化癌がdouble cancerとして認められることは稀であり、鑑別に難渋した一例を経験したためここに報告する。
2010-07-25