茶園土壌への高級脂肪酸の添加が溶脱窒素量とチャの窒素吸収量に与える影響

概要

論文の詳細を見る
表層土壌(深さ10cm)に顆粒状の高級脂肪酸(以下「顆粒状脂肪酸」と称する)を0,0.5,1,5%混合し,チャ(1年生挿し木苗)を約1か月間栽培した土耕ポットを試験に用いた.これらポットに^<15>Nでラベルした硝酸カリウムまたは硫酸アンモニウムを施用し,その後30日間溶脱水中の硝酸態窒素とアンモニア態窒素濃度を測定し,顆粒状脂肪酸の溶脱窒素削減効果を検討した.併せて,チャの窒素吸収量への影響も検討した. 1)顆粒状脂肪酸を5%添加した場合,溶脱水中の硝酸態窒素濃度とアンモニア態窒素濃度が大きく低下し,施用窒素の溶脱量は無添加(0%区)の場合と比べて,硝酸カリウム施用の場合約6割減,硫酸アンモニウム施用の場合約8割減と大幅に削減された. 2)顆粒状脂肪酸の添加により,土壌中の無機態窒素が減少したことや,標識窒素の土壌残留量が増加したことから,顆粒状脂肪酸の溶脱窒素量削減効果は主に脱窒ではなく,窒素の有機化によるものと考えられた.3)顆粒状脂肪酸を5%添加した場合でも,チャの生育は抑制されず,むしろ無添加の場合より旺盛であった.また,チャの窒素吸収量も増加し,5%までの顆粒状脂肪酸の添加は,むしろ窒素吸収量を高め,生育を促進したと推察された.
2009-12-05