イソアワモチとその「近似種」について
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概要
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アワモチ科Onchidiidaeは日本南岸の潮間帯に生息するナメクジ状の海産有肺類で,分類学的な検討が遅れているグループである。イソアワモチは日本に産するアワモチ類の中で最大の種であり,また広範囲に分布する普通種であるため,様々な図鑑にも掲載されている。これまでイソアワモチは1種であると信じられてきたが,本誌前稿において片桐・片桐(2007)は「イソアワモチと一般に呼ばれているものには2種含まれている」ことを示した。片桐らはイソアワモチの生理学を長年に渡って研究しており,その研究材料に対する情熱と精密な観察から,軟体動物学者が誰も気付かなかった(関心がなかった?)2種の存在を明らかにしたことは驚きである。片桐・片桐(2007)が詳述しているように,この2種は外見が極めてよく似ているが,発生様式が大きく異なり,両者が同所的に生息することから生物学的種(別種)であることは疑う余地はない。筆者はアワモチ類の分類学的検討を行っているが,最近になってこの近似種をどうにか識別できるようになった。この2種は外見での区別は困難であるが,わずかな差は認められる。今後の生態調査や絶滅危惧種の選定にあたって両種を正確に識別することは重要である。片桐・片桐(2007)が示した写真では両種の特徴が分かりにくいので,本稿では両種の新たな写真を示して識別点について論じると共に,この2種についての筆者の知見を記す。なお,片桐・片桐(2007)はイソアワモチに似た小型の近似種を「ミニアワモチ」と仮称しているが,本文では正式な標準和名が確定するまでは「イソアワモチ近似種」(以下「近似種」と略す)と呼ぶことにする。
- 日本貝類学会の論文
- 2007-08-31
著者
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