エストロジェン類による環境汚染のバイオマーカー,クサガメのビテロジェニン : アミノ酸配列の相同性の比較とエストロジェン曝露後のmRNA発現(毒性学)
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概要
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エストロジェン活性物質による環境汚染の程度を示すバイオマーカーであるビテロジェニン(VTG)は,汚染物質の曝露後,形態や機能に異常が見られる前に卵生動物の血液中に出現する.カメ類のビテロジェニンに関する報告は限られている.そこでクサガメ(Chinemys reevessi)VTGのcDNAをクローニングし,塩基配列を調べた.クサガメVTGの部分cDNA断片は5'端に開始コドンを持った2,229bpで,743個のアミノ酸をコードしていた.VTGの一部分を構成するフォスビチンは高いセリン含有量を特徴とするが,今回クローニングしたcDNA断片の推定アミノ酸配列にはそのような部分はなく,クローニングされなかった部位にフォスビチンがコードされると推察された.クサガメVTGのアミノ酸配列についてVTGの全配列が既知である2種の鳥類,1種の両生類,および5種の魚類のVTGのそれと相同性を比較した.クサガメVTGは類似性値として,セグロカモメ78%,ニワトリ76%,アフリカツメガエル69%,ウナギ63%,マダイ62%,タラ62%,コイ62%,ゼブラフィッシュ61%の相同性を示した.相同性解析図では,クサガメVTGは鳥類,魚類,および両生類VTGから独立し,両生類と鳥類の中間に位置していた.クサガメVTGの塩基配列から設計したプライマーを用いて,クサガメVTGのmRNA発現を検出できる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を開発した.mRNA発現産物(292bp)が,estradiol-17β曝露後の雄クサガメ肝臓から拍出したtotalRNA中に証明された.ここに示した成績は淡水性カメを用いる環境毒性学的研究に役立つとともに,野生動物の保護に貢献できる手段の1つになるだろう.
- 2008-03-25
著者
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鎌田 洋一
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻
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星 英之
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻
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星 英之
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医公衆衛生学研究室
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星 英之
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医公衆衛生学教室
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多田 哲子
京都府保健環境研究所水質課
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中尾 亜矢
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医公衆衛生学研究室
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坂 雅宏
京都府保健環境研究所水質課
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鎌田 洋一
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医公衆衛生学研究室
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Hoshi Hidenobu
Department Of Veterinary Public Health Division Of Veterinary Sciences Graduate School Of Agricultur
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鎌田 洋一
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医公衆衛生学教室
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