「信頼できない語り手」再考 : 物語論的な見地から(齋藤榮二教授退職記念号)
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概要
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すべての物語は語り手によって語られる。語り手によって語られない物語は存在しない。しかし、語り手は作者のような生身の人間ではなく、物語という言説が持つ一つの機能である。どんなに荒唐無稽な事柄であっても、それが物語世界における出来事である限り、読者は語り手の語ることを疑わない。しかし、読者は語り手の語る言葉をすべてそのまま真実だと受け入れるわけではない。なぜなら、語り手は読者に与える印象を考慮して、物語世界の情報を常に操作しているからだ。このように、出来事とそれについて語られた物語言説との間には常に間隙が生じる。「信頼できない語り手」はここに介在する。拙論では、「信頼できない語り手」について物語論的な立場からその構造の記述を試みる。
著者
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