精神保健の知識と理解に関する研究一般住民と精神保健福祉士、作業療法士、一般看護師、精神科看護師との比較検討 : 日豪共同研究の過程で(社会福祉学科共同研究)
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概要
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本研究は、2003年度に行った一般住民対象の「精神保健の知識と理解に関する調査」を精神保健福祉士、作業療法士、一般看護師、精神科看護師等に行い、彼らの精神疾患に関するイメージ、及び精神保健に関する知識や理解の現状を把握し、今後彼らをも含めた普及啓発活動の指針開発に対する基盤を確立することを目的とした。方法は、「精神保健の知識と理解に関する調査票」(日本語版)を専門家対象の質問紙調査仕様に改変したものを使用して、平成16年秋から幾つかの全国学会・協会に対して調査協力依頼を行い、合意の得られた組織で無作為抽出された構成会員への郵送調査を行った。個別の調査依頼(4,575人)に対して総数1,124人からの回答が得られた。回収率は34.6%であった。結果は、事例の認識度について、うつ病事例では一般住民28.8%に対して、作業療法士72.0%、精神保健福祉士70.4%、一般看護師36.1%、精神科看護師29.1%であり、統合失調症事例では一般住民25.3%に対して、精神保健福祉士75.9%、作業療法士73.4%、看護師37.2%、精神科看護師32.8%であった。事例への人的支援については、一般住民がカウンセラーに高い期待を示したのに対して、専門職では精神科医への期待が最も高かった。薬剤の認識は専門職間、一般住民と専門職とで差異を見た。治療法では一般住民が身体を動かすことに期待していたが、専門職は精神療法を高く評価した。地域の人々の偏見差別については、うつ病について一般住民と専門職との間で差異を見た。統合失調症へのなりやすさは、一般住民が「失業者」を懸念したが、専門職は「25歳以下の若い人」が最も多いとした。精神保健に関する知識の習得については、専門職が一般住民よりやや高いが、内容によっては一般住民とほぼ同様であったり、専門職間で差異が見られるものもあった。今後は、グループ間の差異を更に確認し、各専門家にとって適切な普及啓発活動の指針を早急に開発していくことが重要であると考える。
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