インターネットという中間領域に生きる若き過食女性たち : 現実世界では言葉にできない思いを抱えて(第7回聖路加看護学会学術大会)
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概要
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神経性大食症(Bulimia Nervosa : 以下BN)は、1980年代に提唱された比較的新しい概念で、過食と下剤や自発嘔吐による浄化を繰り返す病であり、近年、若い女性の間で増加傾向にある。しかし、BNは神経性無食欲症(Anorexia Nervosa : 以下AN)とは異なり、著しい体重減少を伴わないことがほとんどであるため、患者が明らかになることが少ない。本研究の目的は、BN患者たちの心理を病理としてではなく、現代社会に生きる若い女性たち共通の特徴的な心理として理解することを試みることである。BN女性たちは医療機関につながることが少ないため、インターネットの検索により、Webページを運営する10人のBN女性へのアクセスを得た。結果、6人から了解を得、彼女たちを対象者としてe-mailによるアンケートとインタビューを行った。BNになったきっかけとして、6人全員がダイエットと答えた。彼女たちはただ「痩せたい」という思いからでなく、低い自尊心からくる自己否定の一つの形として、食欲を過剰に抑えようとしたと考えられる。その反動として、過食が起こりBNという病理に発展していく。研究に参加した女性たちは、Web上で自分の思いを表現することを自己維持のためのストラテジーとして用いていると考えられる。Web上で自分の思いを自由に吐き出すことが、彼女たちにとってカタルシスの効果があると考えられる。ネットの世界は彼女たちにとって安心することのできる大切な居場所である。そして、このインターネットの世界は外界とも内界ともいえない中間的な場所、すなわち、ウィニコットのいう中間領域であり、パソコンは移行対象と捉えることができる。BN女性たちは、未熟な自己を抱え、インターネットという中間領域で他のBN女性たちと擬似コミュニティーを形成し、外界へ適応するための学習をしていると考えられる。
- 聖路加看護大学の論文
- 2002-06-30
著者
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