狂牛病およびO157食中毒事件の家計生鮮肉需要に及ぼした効果 : 需要体系アプローチ
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ロッテルダム型需要体系モデルの特定化・計測を通じて,1996年に発生した狂牛病事件および病原性大腸菌O157集団食中毒事件がわが国家計の生鮮肉類需要に与えたインパクトを検討した。生鮮肉需要は,価格,所得,ならびに肉類に関して家計が知覚している安全性の関数としてモデル化した。肉類の知覚された安全性は家計に利用可能な安全性/健康リスク情報の関数であると仮定し,1985年5月から1997年10月に渡る当該情報の変化を,わが国の代表的全国紙である朝日新聞による狂牛病騒動とO157食中毒事件の報道量によって代用・測定した。主要な分析結果は次の3点であった。第1に,狂牛病の報道は1か月の時差をもって牛肉購入に顕著なインパクトを与えた一方,O157報道は牛肉,合いびき肉,「他の生鮮肉」(レバーを含む)の購入を手控えさせた。しかし,豚肉と鶏肉の需要はこれらの事件報道の影響を受けなかった。第2に,当該事件の報道増加が牛肉,合いびき肉,「他の生鮮肉」の需要に及ぼした負の効果は,報道減少に伴う需要回復効果を上回らなかった。この結果は,報道の増加局面と減少局面でリスク情報効果に非対称性が存在しなかったこと,したがって,生鮮肉の需要構造は事件前後で変化しなかったことを意味する。最後に,1996年4月から9月にかけて各月の牛肉購入量減少率の60%〜80%は,狂牛病およびO157事件の報道増加にともなうリスク情報効果によるものであり,価格効果や所得効果を大きく凌駕していたことが認められた。
- 帯広畜産大学の論文
- 1998-10-26
著者
関連論文
- 成果紹介 選択型コンジョイント分析による生産情報公表牛肉とBSE検査済み外国産牛肉の消費者評価
- 生産情報公表牛肉およびBSE検査済み外国産牛肉の消費者評価 : ―選択実験による接近―
- 米国産牛肉輸入停止下における国産・輸入牛肉の消費者評価 : 選択実験データの確率係数ロジット分析(社会(2))
- 食品安全性に関する態度が牛肉選択行動に与える影響 : 社会心理的要因を考慮した選択実験
- 牛肉のトレーサビリティに対する消費者評価
- 牛肉の飼料自給率向上に対する消費者評価 : Best-Worst尺度構成法の適用(例会個別報告要旨(第116回例会))
- 狂牛病およびO157食中毒事件と牛肉小売需要 : POS週次データによる再検討
- 食品安全性情報と家計食料需要 : 狂牛病騒動・O 157事件の事例分析
- 狂牛病およびO157食中毒事件の家計生鮮肉需要に及ぼした効果 : 需要体系アプローチ
- わが国における砂糖の需要・供給弾力性の推定
- 栄養摂取コストの推計 : 昭和32〜56年全国平均農家
- 生鮮肉の選好構造に関するノンパラメトリック分析
- 生鮮肉需要の構造変化に関するノンパラメトリック分析
- 農産物価格支持政策と地代・農業賃金率
- グループ分けされたグロス・セクション・データからの需要体系推定
- BSE検査と原産国別牛肉に対する消費者の評価 : 非補償型ルールの検証(第111回例会報告要旨)
- 畑作物政策と品目横断的経営安定対策 : 欧米との比較(2005年度秋季大会シンポジウム『品目横断的政策と畑作農業』)
- ネットワーク型競り実験による安全な食品に対する支払意志額の計測 : サルモネラ・フリー鶏卵のケース
- 畑作物政策と品目横断的経営安定対策 - 欧米との比較