蛋白質のデザインおよび進化 : 生命と物質の間のボトルネックを抜ける(複雑な多谷ポテンシャルエネルギー面上で生起する動力学的諸問題-力学的決定性と統計性の中間領域を探る(第1回)-,研究会報告)
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概要
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蛋白質等のヘテロ高分子を統計力学的に設計(デザイン)する方法について報告する。ここで検討する手法は、KuroskyとDeutschによる設計基準[1,2]、すなわち、設計したいターゲット構造をとる確率を最大化するという設計基準に基づくものである。この新しい設計手法(「設計方程式法[3,4]」と呼ぶ)の特徴は、もともと20種類の値をとる離散的なアミノ酸配列変数を連続化して表現することにより、決定論的な力学方程式を用いた最適化を行うという点にある。また、各モノマーに対応する配列変数が並列に時間発展するので、従来手法に比べて高速に収束し、スケーラビリティーが期待できる。本稿では、まず設計問題自体についての解説を行い、統計力学に基づく代表的な設計手法を概説する。さらに、HPモデル[22,24,25]と呼ばれる単純化された蛋白質モデルにおける設計問題に設計方程式法を応用し、シミュレーテッド・アニーリングを用いた従来手法とのパフォーマンスの比較を行った結果を示す。
- 物性研究刊行会の論文
- 2001-04-20
著者
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時田 恵一郎
大阪大学サイバーメディアセンター
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時田 恵一郎
大阪大学サイバーメディアセンター、院理、院生命機能
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TOKITA Kei
Department of Pure and Applied Science, College of Arts and Sciences University of Tokyo
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