リードカナリーグラス(Phalaris arundinacea L.)草地における分げつの発生・生長の動態
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概要
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1984年5月-1985年10月に,異なる施肥水準と刈取頻度を組合せた4処理条件下のリードカナリーグラス草地で,各刈取時に収穫部を構成する既存分げつ,および刈取直後に発生する新分げつの推移を調査した。両年を通して,刈取時に収穫される分げつ(=生産分げつ,TPT)の密度は,施肥少なく,刈取の多い条件下でやや多くはなるものの,処理間の差は比較的小さく,また刈取回次による違いも少なく,単位面積(m^2)当り800-900茎前後で推移した。各刈取時における生産分げつは,晩秋の刈取時を除くと,主に伸長節間を刈られて再生しない分げつ(CET)によって構成されていた。これに対して,節間伸長しないため茎端が残り,再生可能となる分げつ(NET)は少なく,概ね200茎/m^2以下であった。しかし,両年とも秋の最終刈時にはCETが少なくなり,NETの割合が高まった。いずれの時期においても,刈取後,直ちにCET刈株に着生する休眠芽が萌芽して多数の分げつが外部に出現した。これらの多くは,刈株地下部の節に起源する分げつ(UST)で,地上節からの分げつ(AST)は,USTの1/3-1/4以下であった。これらの新分げつにNETを加えた再生分げつの総数(TRT)は,刈取時期に関わりなく,ほぼ1,000茎/m^2であり,しばしば刈取時の生産分げつ数よりも多くなっていた。乾物収量が刈取時の1茎当り乾物収量(=1茎重)と著しく高い正の相関を示すことからみて,リードカナリーグラスでは,栽培条件に関わりなく,常に一定範囲の茎数密度を確保しようとする分げつ発生機構と,それらの分げつの特異的に強い生長力に支えられた安定的な乾物生産過程が存在すると考えられた。
- 日本草地学会の論文
- 1990-01-31
著者
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