膀胱癌の治療成績 : TURの限界と膀胱全摘除術の適応

概要

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移行上皮癌705例に対するTURおよび膀胱全摘除術の生存率,TURの膀胱腔内再発率について,組織学的異型度別,組織学的深達度別に従って分類し検討した.1.治療法別の累積生存率は,TUR(493例)では5年76.8%,10年61.2%,膀胱全摘除術(142例)では5年59.8%,10年49.4%,膀胱部分切除術(34例)では5年46.2%,10年41.6%であった.2.TURを施行した493例の各異型度の5年および10年累積生存率はそれぞれG1(302例)85.9%,72.0%,G2(155例)66.1%,44.6%,G3(36例)39.8%,24.9%であり,各異型度間の差は統計学的に有意であった.3.TURを施行した493例の各深達度の5年および10年累積生存率はそれぞれpTa(227例)91.5%,78.5%,pT1(196例)75.5%,60.6%,pT2以上(43例)49.0%,22.0%であり,各深達度間の差は統計学的に有意であった.4.TUR施行例の膀胱腔内再発は,1年29.6%,2年44.2%,3年49.2%,4年52.9%,5年で55.4%,10年62.7%であり,異型度別では,1年および5年再発率は,G1 21.3%,47.7%,G2 43.4%,66.9%,G3 41.9%,76.0%で,G2,G3はG1に比べて,有意に再発率が高くなっていた.5.TUR施行例の深達度別の1年および5年膀胱腔内再発率は,pTa,23.8%,49.0%,pT1,28.3%,55.4%,pT2以上53.0%,78,6%で,pT2以上はpTa,pT1に比べて有意に再発率が高くなっていた.6.膀胱全摘を施行した142例の異型度別の5年累積生存率は,G1(13例)62.9%,G2(66例)67.6%,G3(63例)51.7%であった.7.膀胱全摘を施行した142例の深達度別の5年累積生存率は,pTis(8例)100%,pTa(7例)83.3%,pT1(37例)64.3%,pT2(32例)76.1%,pT3a(19例)58.4%,pT3b(25例)33.1%,pT4(14例)25.9%であった.膀胱壁外に浸潤しているpT3b以上では生存率はきわめて低くなっていた.8.G2,pT2以上の症例におけるTUR(40例)と膀胱全摘施行例(32例)の累積生存率は,5年で膀胱全摘施行例57.2%,TUR施行例42.0%,10年で膀胱全摘施行例47.6%,TUR施行例16.1%と,膀胱全摘施行例の方がTUR施行例よりも予後が良い傾向がみられた.9.G3,pT2以上の症例におけるTUR(23例)と膀胱全摘施行例(55例)の累積生存率は,5年で膀胱全摘施行例49.3%,TUR施行例27.7%,10年で膀胱全摘施行例49.3%,TUR施行例20.7%と,G2と同様に膀胱全摘施行例の方がTUR施行例よりも有意に予後が良くなっていた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1988-03-20

膀胱癌の治療成績 : TURの限界と膀胱全摘除術の適応

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