教育学研究における知的生産としての授業分析の可能性 : 重松鷹泰・日比裕の授業分析の方法を手がかりに(<特集>教育現場の多様化と教育学の課題)
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概要
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本稿では、教育学の基礎研究として、重松鷹泰(1961)以来の授業分析の意義を再確認するとともに、重松の授業分析の方法や、それにもとづく日比裕ら(1989)による授業諸要因の関連構造の考え方を参考にしながら、授業の理論的構造を記述するための方法を展開する。授業研究と対比すれば、授業分析は、教育学における理論構築を指向している。重松の授業分析では、授業の記録が質的に分析され、解釈学的な方法によって理論的知見がもたらされる。このためには、次の5つの条件を満たす必要がある。(1)事実にもとづく理論構成。(2)教育実践からの参照可能性のある理論構成。(3)可塑性のある理論構成。(4)子どもの思考過程の解明。(5)動的な把握。日比らの授業諸要因の関連構造の研究では、教室で観察され記録された事実や出来事が、授業諸要因とその関連構造として、再構成される。これは、研究方法論上の原理においては、5つの条件を満たすものである。しかし、子どもの生きた経験の世界を研究しながら、概念的な知見を導き出すためには解釈を必要とし、事実に基づき理論的な構造を構成するのには困難を伴う。そのため分析手法のレベルにおいては、これまでの研究では、第3の条件である可塑性のある理論構成を満たすまでには至っていない。このためには、新しい関連構造の記述法が開発されなければならない。
- 2007-06-29
著者
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