ヘリコバクター・ピロリのVacA毒素のp38MAPK活性化とCOX-2発現機序
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概要
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ヘリコバクター・ピロリは胃炎,消化性潰瘍,MALTリンパ腫など各種消化器疾患の起病性が明らかになるとともに,胃癌の発症との関連性がある新興感染症の原因菌の一つである。本菌の感染は世界人口の約半分,特に熱帯地を含む発展途上国においては8割の人々が感染して蔓延している。これまで病原因子機能解析分野はヘリコバクター・ピロリ感染の毒素病態学的な研究を進め,本菌が産生するCytotoxin,VacAがヒト胃粘膜上の受容体型プロテインキナーゼ(RPTP)βを介して胃粘膜障害を引き起こすことをRPTPβ KOマウスを用いて明らかにした(Nature Genetics 2003)。一方,胃粘膜にはRPTPβ以外にRPTPαも発現して,VacAと結合すること(JBC 2003)。さらに,VacA結合に必須なドメイン(QTTQP)構造も明らかにした(JBC 2004)。加えて,VacAがp38MAPKのリン酸化を促して活性化し,転写因子ATF-2の働きを亢進することを報告した(Nakayama, M, et al J. Biol. Chem. 279, 7024-7028)。興味深いことのVacAと受容体は細胞膜上で結合した後にリピッドラフトに集積し,その後,p38MAPKの活性化のシグナルを伝達するとともに,細胞内へと移行して空胞形成及びミトコンドリア障害を引き起こす。また,VacAによるp38MAPKのリン酸化亢進は,標的細胞膜にあるGPI-結合蛋白をPI-PLCであらかじめ切断すると著明に阻害され,このPI-PLCでの細胞前処理はVacAの標的細胞への結合には影響を与えない。そこで,1)p38MAPKのリン酸化を担うMKK3/6やVavなどの機能に及ぼすGPI-結合蛋白の影響などに焦点を当てて,VacAによるp38MAPK活性化機序を解明する。また,2)初期の実験でVacAはp38MAPKの活性化を介して炎症を惹起する物質であるPGE2を産生するCOX-2の発現を誘導する知見を得ている。このCOX-2発現の転写レベルでの詳細な機序を明らかにすることを目的として究明した。
- 長崎大学の論文
著者
-
平山 壽哉
長崎大学熱帯医学研究所病原因子機能解析分野
-
倉園 久生
大阪府大院・生命環境科学・獣医公衆衛生
-
野田 公俊
千葉大学大学院医学研究院
-
平山 壽哉
熱帯医学研究所
-
畠山 智充
長崎大学工学部応用化学科
-
畠山 智充
長崎大学工学部
-
野田 公俊
千葉大学医学部微生物
-
倉園 久生
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科
-
野田 公俊
千葉大・院・病原分子制御学
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