「<親>になる」ことへの物語論的アプローチ : NICU入院児の親の語りを手がかりに
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概要
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本稿の目的は、「<親>になる」という出来事の重層的な構造を明らかにすることである。親子関係の構築を愛着形成過程と捉える従来の見方を留保し、<子>との関係の中で<親>が被る戸惑いや苦しみの経験を、NICU入院児の親の語りに即して解明することを試みた。物語論的視点から語りを整理・分析する作業を通じ、<親>という主体が生成する三つの局面が見出された。<子>との直接的対面関係に基づく第一の局面と、家族・社会等における役割関係に基づく第二の局面では、「<親>になること」は養育責任者としての一般的役割の遂行と見分けがつかない。しかし、<子>を理解する枠組みとしての物語が破綻する状況において、役割関係を超えてなお<子>へ応答を差し出そうとする第三の局面が垣間見られる。<親>は、物語る行為の中で、三つの局面のあいだを視点移動させながら「<親>になる」経験を重層的・循環的に理解していることが明らかになった。
- 2007-03-30
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