高齢者・難病患者とバイオフィードバック : 身体記憶BFモデル概念の提唱(シンポジウムこころへのはたらきかけとしてのバイオフィードバック-個人に合ったバイオフィードバックとは-)

概要

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老化と難病はいずれもその病因か不明であるため,現状では根治療法不能な疾患という共通点を有している.さらにいずれも発症時期・経過・病態・リハビリ効果などに個人差が大きく,西洋医学に用いられてきたような定型的対処法(Lege Artis)を一律に定めることは困難である.これに反して疾病反応の個体差パターンである「証」を重んじる「東洋医学」や生体自身の信号を用いる「バイオフィードバック(BF)」のように,生体自身の治癒力を高めるなど生体に内在する機能を活用することによる治療効果を期待する手法は,副作用が少ないうえ,その病因のすべてを理解せずとも様々な病態の患者さんにともかくも適用可能な「人に優しい治療」であるといえよう.我々は高齢者の難病としてアルツハイマー型認知症(AD)とパーキンソン病(PD)を研究主題として,「未梢神経刺激による中枢神経機能制御」の原理に基づき,いくつかのバイオフィードバック的リハビリ療法を試みてきた.その結果,パーキンソン病(PD)については患者に視覚的BF/聴覚的BFを行なうことにより,振戦周波数かPDに特徴的な4Hz近辺から健常人類似の8Hz近辺へと上昇するとともに,振戦強度を減少させることに成功した.また認知症については光刺激訓練/電気的ツボ刺激を行なうことによりHDS-Rの改善,対光縮瞳反射機能などの成果を得ることができたほか,足底叩打刺激によってMMSEおよびPOMSの得点改善が見られ,周辺症状減少につながる情緒不安定の改善を達成することができた.以上のバイオフィードバック訓練においては,患者毎にフィードバック情報に対する適合度が異なるとともに,いずれも刺激強度を患者毎に微調整することが成功の秘訣であったことから,個人にあったBFモダリティと刺激量を適切に選択することか重要であると思われた.また鍼治療におけるように,解剖学的には一見無関係と見える遠隔体部位を刺激することにより中枢神経系に作用を及ぼすことが可能であること実証したことから,視床下部における神経伝達物質制御機構を介した,未知の生体自律適応システムの存在がその背景にあるものと思われる.特に座禅におけるアルファ波出現・心拍数低下や,ヨガにおける痛覚制御・体温低下などの自己制御減少との対応から,BFの成立には必ずしも「意識的な自己情報の認識」は必要とされないことに気付く.BFの最終目的が,心身相関現象を利用した「疾病治療」あるいは「健康維持」であるとするならば,前述の鍼灸・漢方を含む統合医療をも包含し,必ずしも「認識」を介することのない「広義のBF」へと概念を拡張することが,BF研究をさらに進めるとともに,BF療法のさらなる社会的貢献に繋がるものと思料する.
2007-04-28

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