上肢振戦周波数バイオフィードバックシステムを用いた振戦の制御

概要

論文の詳細を見る
パーキンソン病は, 関節の硬直(固縮)と動作の綬慢(無動), 静止時の震え(振戦)を三大症状とする疾患である.特に振戦はその大きな振幅が患者の生活を困難とする最大の要因であり, その抑制が必要とされている.バーキンソン病の治療にはドーパミンの前駆体であるL-DOPAの投与が行われているが, wearing-off現象や妄想などの重篤な副作用が現われるため十分な治療法とはいえない。これまでに我々はバイオフィードバックによる振戦刺御の目的で患者の振戦症状とその他の生理的パラメータとの関係を調査してきた.患者の主な生理的パラメータとしては血中ドーパミン濃度とパーキンソン病の重症度を示すHoehn & Yahrの重症度を用いた.その結果, 振戦加速度を周波数解析し6Hzから10Hzまでの周波数帯域におけるピーク周波数値と患者の血中ドーバミン濃度およびHoehn & Yahrの重症度との問に高い相関があることを発見した.本報告では, バイオフィードバック訓練による振戦制御システムのフィードバック指標として, この振戦周波数値を用いた.被験者は健康な成年16名(男性10名, 女性6名, 平均年齢23.3±2.1歳).上肢の振戦加速度を我々のシステムにて計測し, 高速フーリエ変換後, 6-10Hzの周波数帯域でのピーク周波数値をフィードバックした.訓練中は被験者にはフィードバックされる周波数値が上昇するよう訓練目標を提示し, 各人3回の訓練を行った.3回のフィードバック訓練の前後で1回ずつ1分間の振戦計測を行い, 訓練によって振戦周波数の上昇がみられるかどうかを調べた.訓練により振戦周波数値が上昇した群では, 振戦強度が小さくなる傾向がみられ振戦周波数値のフィードバックが振戦の抑制に有効であると考えられた.この結果は本システムが振戦制御を可能とするであろう事を示唆している.
日本バイオフィードバック学会の論文
1998-03-31

上肢振戦周波数バイオフィードバックシステムを用いた振戦の制御

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク