ハーブで染色したウール織物とその抗菌性
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概要
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本研究では色材として6種のハーブを用いて,それぞれ予めAlおよびFe媒染された毛織布を,その染色濃度を高めるため1,3,5回繰返し重ね染めして得た染色毛織布について染色物としての価値評価を行った.まず染色物の色相,色濃度を分光測色によって評価する一方,3種の染色堅牢度試験を行った.さらに,植物染料染色物が併せ持つもう一つの特性,抗菌的作用についても評価を行った.1.高濃度のエタノールによるハーブ色素の抽出により高色素濃度の染液が得られたが染着性は乏しく,逆に水混合比を増すと多量の色素が沈積して染液の濃度が上がらない.最大の染着が示された80%エタノール水溶液による染色でも満足な染色濃度は得られなかった.ここでは高濃度の染色布を得るために,結局,本来の水煮沸抽出によって得た染色液を用いて染色回数を重ねる方法を選んだ.2.AlおよびFe媒染された毛織布を,1,3,5回繰返し重ね染めを行うことにより,両布に大差なく,いずれのハーブからも実用できる中・濃色の染色布を得た.K/S値からSG,TM,RMが濃く,つぎにCM,さらにLV,MGの順を追って小さくなるが,いずれの場合も染色を重ねるにつれてK/S値は大きくなり,5回染めの結果はエタノール/水系染色布のK/S値の2倍を越えるものも見受けられた.3.得られた染色布の色相はa^*b^*色度図上,極く限られた範囲の黄から黄赤系の色(褐色〜茶褐色)を呈した.反射率スペクトルおよび色度図から重ね染めにより濃色化をともなって,赤みシフトが認められ,Fe媒染布はAl媒染布より赤みを呈した.4.染色堅牢度試験の結果はいずれのハーブについても一般の染色製品として堅牢性は許容されるレベルに達するものであった.洗濯,アルカリ汗に対する染色堅牢度において,全試料ともに汚染級数は4-5以上で添付白布の羊毛,綿ともにほとんど汚染は認められなかった.一方,変退色級数はFe媒染布ではSGを除いて4級以上を示した.Al媒染布ではTM,CM,MGについて3-4級以上,LVは3級であり,SGおよびRMが2-3級,2級と大きい変化が示された.この場合の変退色級数の劣化はアルカリによる変色と推定された.耐光堅牢度はRMが2級(Al媒染),3級(Fe媒染)と退色が最も大きく,Al媒染のTM,SG,LVが3級であった他は大体4級以上を示した.また概してFe媒染がAl媒染より耐光性において優れていた.5.抗菌性試験の結果は期待に反するもので,ハーブのもつ抗菌作用に関する薬効を充分引き出す結果を得ることはできなかった.S. aureusおよびE. coliとも,LV,CM,TMは5回の重ね染め布でも菌の増殖を抑止することができなかった.SGは唯一,両菌種で殺菌活性が認められ,RMとMGとはE. coliで殺菌活性を示したが,そのMGはS. aureusの増殖を抑止することができなかった.
- 武庫川女子大学の論文
著者
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澤 裕子
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科
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甫天 正靖
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科
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澤 裕子
武庫川女子大学家政学部
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森川 直子
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科
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山林 智映
武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科
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