ポリメチン系カチオン染料で染色したアクリル繊維のハロクロミズム
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概要
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本研究では染料カチオンを呈するオニウム基が発色系と共役している共役型のポリメチン系染料について,既報の絶縁型を代表するアゾ系カチオン染料との対比において染着挙動を調べた.1)ポリメチン系染料においてもPAN-rHに対する染色速度はPAN-rNaに対する染色速度とほぼ同じで,既報したように同様の機構,通常のアクリル繊維(PAN-rNaに相当)が染料カチオンを異種の電荷として吸引し合う機構で吸着すると考えられる.すなわち,染色の初期過程においては染料カチオンはPAN-rHに対して,PAN-rNaと同様で,従来からの染着機構で吸着している.2)PAN-rHおよびPAN-rNaにはほぼ同量の染料カチオンが吸着されているが,PAN-rHとPAN-rNaとの染色繊維の色相に差違がみられる.PAN-rNaの染色繊維がその染料本来の色相であるのに対してPAN-rHの染色繊維には異常な色相を呈する染料が見出され,染色繊維の反射率スペクトルと染料の0.01〜0.1mol/lの塩酸水溶液の吸収スペクトルとが対応することから,PAN-rHの強酸基においてこの染料とプロトンとが相互作用することが示唆された.すなわち,PAN-rHの染色繊維ではそれぞれの染料の色素分子へのプロトン付加平衡によって表れるハロクロミズムに相当する色相変化が現れており,染料カチオンとしてPAN-rHに吸着した染料はその色素分子部分が繊維分子中において強酸基上のプロトンとの相互作用を受けて色相が変化したと考えられる.3)また0.01〜0.1mol/lの酸濃度は繊維分子中の強酸基上のプロトン濃度0.04mol/kg fiberに相当する.4)染色繊維の色相変化はプロトン付加平衡によって表れる造塩発色に相当する.既報のアゾ系染料ではその色素分子部分アミノアゾベンゼソ誘導体が示す長波長シフトであり,本報のポリメチソ系染料ではポリメテン分子へのプロトン付加による主吸収帯の吸収の減退(400nm以下紫外域の吸収帯の吸収増をともなうので短波長シフトとも云える)が示され,造塩発色はそれぞれの染料の系種ごとに,色素分子部分へのプロトン付加の状態によるので,異なると考えられる.5)ポリメチソ色素分子における主吸収帯の吸収の減退はアミノフェニル基のアミノ基窒素へのプロトン付加に起因すると考えられる.この場合,電子供与性のCH_3基を有するDYE6のスペクトル変化が大きく,一方電子吸引性のCN基をもつDYE8のスペクトル変化が小さく得られた理由はアミノ基窒素上の電子密度が増減してプロトン付加の易,難に関係しているためと考えた.また,MO法によるNACの計算値からもプロトン付加はアミノフェニル基のアミノ基窒素に起り易いことが示唆された.
- 武庫川女子大学の論文
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