種々のカチオン染料で染色したアクリル繊維のハロクロミズム
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概要
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本研究では,既報に続いて代表的なカチオン染料として絶縁型のAAQ系染料および共役型のTPM系染料とTAZ系染料をとり挙げ,PAN-rNaに対するPAN-rHの染色物のハロクロミズム現象について調べた。加速染法により同量の染料カチオンを吸着させた染色PAN-rHと同PAN-rNaとの間にAAQ系染料およびTPM系染料では顕著な色相差がみられた.染色PAN-rNaではその染料本来の色相であるのに対して同PAN-rHでは異常な色相を呈し,その色差値はCIELAB表色系でのΔEによると8〜17unitと大きかった.一方,TAZ系染料では両染色繊維間で色相差は観察されず,色差値ΔEも1unit以下であった.染色PAN-rHにおける異常発色現象を表す反射率スペクトルと塩酸濃度0.01〜0.1mol/lの染料溶液の吸収スペクトルとはよく対応した.染色PAN-rHでは絶縁型および共役型を問わず,染料の色素分子へのプロトン付加平衡によって表れるハロクロミズムに相当する色相変化が現れている.染料カチオンとしてPAN-rHに吸着した染料は,その色素分子部分が繊維中において強酸基上のプロトンとの相互作用を受けて色相変化する.この色相変化は導入された置換基の色素分子部分へのプロトン付加能による影響を受け,同時に反射率スペクトルにも影響を与えた.染料の吸収スペクトルに変化のみられた塩酸濃度(0.01〜0.1mol/l)は繊維中の強酸基量(0.040mol/kg fiber)に相当した。また染色PAN-r(26)Hの反射率スペクトルは同PAN-rHと同PAN-rNaとの中間にあり,色濃度差ΔK/Sからプロトン付加による色濃度の変化率を換算したところ,両繊維の強酸基量の比と合致して,強酸基上のプロトンはほとんど量論的に染料と相互作用に関与していることが裏付けられた.
- 武庫川女子大学の論文
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