植物染料で染色した絹布とその抗菌性
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概要
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本研究では,植物染料を用いて染色された絹布について染色物としての価値評価を行った.まず染色物の色相,色濃度を分光測色を用いて評価する一方,特徴的な3種の染色堅牢度試験を行った.さらに,媒染処理の影響に関する一考察をふまえて,植物染料染色物が併せ持つもう一つの特性,抗菌的作用についても評価を行って,以下のような基礎的知見を得た.1)植物染料による染色試料は媒染濃度1%owfで実用的にも充分な染色濃度とともに色相を示した.2)植物染料による染色試料について特徴的な3項目の染色堅牢度試験による評価を行った結果,ビンロウジュでは耐光,洗濯および汗堅牢度試験のいずれについても良好な結果を得た.他の植物染料についても,絹布のような高級素材における堅牢度としては良好であった.3)色濃度について充分であるとされた1%owf酢酸アルミニウム媒染処理は,抗菌性を発現せず,染色物の染料吸着による染色物の抗菌性の評価に影響しない.4)金属媒染剤の抗菌性は媒染濃度に依存する.5)媒染剤種が異なると発現する抗菌性の強さにも差が認められる.酢酸アルミニウム,酢酸銅,硫酸第一鉄の中では,酢酸銅がもっとも抗菌効果は高い.また,いずれの媒染剤でも5%owf以上ではS.aureusおよびE.coliに対して強い抗菌効果を発現する.6)抗菌性試験の結果,抗菌的薬効を有するとされる植物染料の含有成分,主として色素成分は,繊維上に染着された状態でも抗菌活性を失活しないことを示した.本研究に用いた8種の植物染料のうち,とくにザクロ,クチナシ,ビンロウジュおよびスオウでは非常に強力な抗菌効果が認められた.一方,キハダ,シブキ,アカネおよびシコンでは,抗菌性の程度はやや劣る傾向がみられた.7)植物染料による染色において,染料-媒染剤-繊維の相互関係は染色試料の抗菌性発現にかかわる重要な因子である.染色試料の抗菌効力は媒染処理による抗菌効果に植物染料の抗菌性が加味されて発現する.
- 武庫川女子大学の論文
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