輸送後のヤギ副腎におけるc-Fosタンパク質発現細胞の分布

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輸送は家畜にとって大きなストレスであり、また生産性を劇的に低下させることがよく知られている。家畜がストレスにさらされると、視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)軸が反応し、ストレスに対処するために副腎から糖質コルチコイドが分泌される。一方副腎髄質においては、ストレスにより自律神経系が働き、エピネフリンやノルエピネフリンなどのカテコールアミンが分泌される。本研究では、ヤギを用いて輸送によるストレス反応に副腎のいずれの部位が関与するのかを、細胞活性化の指標として知られているc-Fosタンパク質の分布を検討した。去勢オスシバヤギ6頭を使用し、それらを対照群(3頭)、輸送群(3頭)に分けた。輸送群は軽トラックにより午前9時から10時まで1時間の輸送を行った。対照群はその間通常通り畜舎にて待機させた。輸送1時間後の午前11時に対照群、輸送群ともに屠殺し灌流固定後、副腎を摘出し免疫染色を行った。血中のグルコース、コルチゾル濃度を測定するために輸送前1回、輸送中15分毎に4回、輸送終了後1時間に1回、合計6回採血した。血中のコルチゾル濃度は対照群と比較して輸送群で有意に高い値を示した。最も高い値は約5μg/dL(10:00)であり、この値は対照群の約5倍であった。血中のグルコース濃度は対照群と比較して輸送群で有意な増加は見られなかったものの増加する傾向がみられた。これらの結果は輸送によりヤギのHPA軸及び交感神経系が活性していたことを示唆する。副腎皮質についてはc-Fosタンパク質陽性細胞数が対照群と比較して輸送群で有意に多かった部位は中間帯(ZI)、束状帯(ZF)、網状帯(ZR)であった。一方、球状帯(ZG)においては対照群、輸送群ともにc-Fosタンパク質陽性細胞数は極めて少なかった。また副腎髄質においては、輸送群のc-Fosタンパク質陽性細胞数は、エピネフリン細胞層(EL)とノルエピネフリン細胞層(NL)の両層において対照群よりも、有意に多かった。輸送群においてc-Fosタンパク質陽性細胞が特に多く発現していた部位はELであった。上記の副腎皮質及び髄質におけるc-Fosタンパク質陽性細胞の分布より、ヤギの輸送に対するストレス反応において、副腎皮質のZI、ZF、ZR及び髄質のE、NE細胞層が関与することが考えられた。
宇都宮大学の論文
2005-11-26

輸送後のヤギ副腎におけるc-Fosタンパク質発現細胞の分布

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