中越地震発生の地質学的背景(<特集>新潟県中越地震の被害と地質)
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概要
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2004年10月23日に発生した中越地震(M6.8)は,東山背斜南部の川口町北方約7km,深度13kmに発生した地震であるが,この地震にともなって,東山背斜から越後山脈との境界を流れる破間川・魚野川付近にまで余震活動が行われた.この地震に際して東山背斜にそって背斜状に隆起し,隆起量は小千谷・川口間で60cm以上に達した.中越地震の震度は,東山背斜とその周辺地域は震度6,新潟県中・南部は震度5を記録したが,この震度5は東北日本南部の各地で記録された.その内,能登半島北部から東京湾付近に至る西北西-東南東方向の震度4を示した帯状地帯の各地に出現した点が注目される.本州東北部の南部の地震活動は,2003年7月26日の宮城県北部地震以来活発化している.その活動域は,朝日山地・奥羽山脈・飯豊山地・越後山脈・足尾山地から構成される脊梁山地西側の信濃川地震帯,その東縁地域,阿武隈山地東縁ないし関東平野に至る地域からその太平洋沖合地域である.中越地震はその一端をなすもので,信濃川地震帯にそうものである.このような本州東北部の南部の地震活動が,西部,中央部,東部がお互いに相呼応して行われることは,1800年代以後の地震活動に共通してみられる傾向である.日本列島は,一辺40ないし50kmの一等三角点網に覆われていて,数10年に一回の割合で改測が行われている.これまで公表されている2回の改測結果の解析によると,最大剪断歪みの大きくなる地域はほぼ決まっており,破壊的地震はそのような地域に発生している.この歪みの集積する地域は,60kmないし120kmよりも深い地震の活動する地域に当たっていることから,この地帯は数10kmよりも深い根をもつものと考えられる.本州東北部の南部の地震活動が,10ないし20年前後の活動期に各所で行われるのは,本州が全体として隆起し,周辺海域が沈降する運動が進行する中で,本州の中の山地の隆起,平野と盆地の沈降運動が進行し,このような運動にともなって各構造単元の境界付近に歪みが集積し,それら各所の歪みが断層の活動にともなう地震活動によって解放されることによるものと考えられる.したがって地震予知の体制は,このような規模の地殻変動と地震活動の監視を基本とすべきであると考える.
- 2006-11-25
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