ショウジョウバカマ(ユリ科)の卵装置の電子顕微鏡的観察
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概要
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ショウジョウバカマ(Heloniopsis orientalis,ユリ科)の受精前の卵装置の構造を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。胚株は倒生で,2枚の珠皮が厚層珠心を囲んでいる。珠心表皮は部分的に並層分裂を行い,2-3細胞層になり,受精後も消えずに生き残っている。卵装置はこの表皮で覆われていることになる。大きなデンプン粒で満たされた大形の色素体は,珠心側部の表皮細胞には含まれていても数は少ないが,珠心先端部の表皮細胞には必ず含まれており,数も多い。卵装置は1個の卵細胞と繊形装置の発達した2個の助細胞で構成されている。受精前の2個の助細胞には構造上の相違は特にはみられない。卵装置を構成する3細胞にも,デンプン粒を含む大形の色素体が存在する。卵細胞の大部分は液胞で占められており,核は合点端に位置している。核の周辺にはいろいろな細胞内小器官がみられるが,数は少なく,構造も単純である。助細胞では,多数のリボソームを伴った粗面小胞体がよく発達し,もつれた糸が作る糸玉のように塊状に集まった小胞体が部分的にみられる。クリステの発達したミトコンドリアも量的にかなり多く存在している。繊形装置付近には多数のゴルジ体がみられるが,強く湾曲し馬蹄形状のゴルジ体が助細胞に特徴的に存在している。馬蹄形状のゴルジ体とデンプン粒を含む大形の色素体の存在が,ショウジョウバカマの卵装置の構造的な特徴と思われる。
- 横浜国立大学の論文
- 1993-10-29
著者
-
佐藤 嘉彦
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
-
安藤 浩之
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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