アオキの花粉形成
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アオキの花粉の形成過程と,この過程でのカロースとPAS陽性物質の行動についての調査を行った。葯には葯隔をはさんで2個づつの小胞子嚢が作られる。しかし,半葯の2個の小胞子嚢を分けている壁は,葯の裂開前に消失する。葯壁は双子葉植物型に従って,また小胞子は同時膜形成型に従って形成される。小胞子の核は分裂し,2核性の花粉が作られる。ヘマトキシリンとファストグリーンで染色した標本から,この生殖核と栄養核を分ける細胞壁が形成されるか否かについての判断は困難である。花粉は3溝孔粒で,この2核の状態で葯から柱頭に運ばれる。小胞子母細胞が減数分裂第一分裂にはいるとすぐに,小胞子母細胞の壁へのカロースの沈着が,絨毯細胞に接している壁から始まる。絨毯細胞に接している小胞子母細胞の他の壁や絨毯細胞に接していない小胞子嚢の内部の小胞子母細胞の壁にも,カロースの沈着が進む。ついにはどの小胞子母細胞もカロース性の壁で完全に被われる。減数分裂中の細胞は常に厚いカロース性の壁で被われている。4核期の細胞が4個の四分子細胞に分けられるときに作られる溝にもカロースが沈着する。小胞子の外膜の形成が始まる頃に,4個の四分子細胞を被う外側のカロース性の壁がまず消失し,続いて四分子細胞を分けていたカロース性の壁も消失する。こうして四分子細胞は互いにはなれ小胞子となる。被子植物の多くの花粉では,栄養核と生殖核を分ける壁に一時的にカロースが沈着する。しかし,アオキではこのカロース性の壁は観察できない。PAS陽性物質は,減数分裂にはいる前の小胞子母細胞の細胞質に顆粒の形でみられ始める。減数分裂中の細胞では,この顆粒ばかりでなく,細胞質全体がPAS陽性の性質を持つ。しかし,PAS陽性物質は,減数分裂を終了した小胞子母細胞では,一時的に検出できなくなる。しかし,栄養核と生殖核を持った花粉では,生殖核の周辺にはPAS 陽性物質はまったく検出できないが,栄養核の周りにはPAS陽性顆粒が多数存在している。このPAS陽性顆粒の分布から,栄養核を含む部分と生殖核を含む部分に花粉の細胞質は分けられていると思われる。しかし,ヘマトキシリンとファストグリーンで染色した標本では,この2核の間の細胞壁の在否の判断は困難であり,花粉の細胞質内からカロースを検出することはできない等の理由から,この細胞質の分離は細胞壁によるものではないと思われる。電子顕微鏡を用いた今後の研究が望まれる。
- 横浜国立大学の論文
- 1988-10-31
著者
関連論文
- オオバジャノヒゲの胞子及び配偶体の形成とカロ-スの消長〔英文〕
- アジサイ(広義)の葉の表面構造の走査型電子顕微鏡的観察〔英文〕
- ホトトギス(ユリ科)の大胞子形成過程の電子顕微鏡的観察
- ショウジョウバカマ(ユリ科)の卵装置の電子顕微鏡的観察
- ショウジョウバカマ(ユリ科)の卵装置の電子顕微鏡的観察〔英文〕
- ホトトギス(ユリ科)の大胞子形成過程の電子顕微鏡的観察〔英文〕
- ノギラン(ユリ科)とハナツクバネ(スイカズラ科)の葯タペ-タム〔英文〕
- ヤマラッキョウの胚嚢形成〔英文〕
- ノギランの胚嚢形成及びこの過程におけるカロースの消長
- アオキの花粉形成
- アオキの花粉形成〔英文〕
- ノギランの胚嚢形成及びこの過程におけるカロ-スの消長〔英文〕
- アオキの胚形成過程における組織学的細胞学的変化
- アオキの胚形成過程における組織学的細胞学的変化〔英文〕
- トベラの胚嚢形成とカロ-スの波長〔英文〕
- キブシの胚嚢形成過程におけるカロースの沈着様式
- マサキのシュートにおける管束の走行様式
- マサキのシュ-トにおける管束の走行様式〔英文〕
- キブシの胚嚢形成過程におけるカロ-スの沈着様式〔英文〕
- マサキ(ニシキギ科)の胚と実生の解剖学的研究〔英文〕
- タイトゴメのシュ-トにおける管束の走行様式〔英文〕