ホトトギス(ユリ科)の大胞子形成過程の電子顕微鏡的観察
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概要
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ユリ科のホトトギス(Tricyrtis hirta)の大胞子形成過程を透過型電子顕微鏡を用いて調査した。この種の大胞子母細胞は減数分裂を行い4個の大胞子を作り,その内の合点端の大胞子(機能的大胞子)1個だけが胚嚢の形成を始める。大胞子母細胞と二分子の合点側細胞,機能的大胞子には,細胞内小器官の分布に極性がみられる。特に,液胞化のほとんど進んでいないこれらの細胞には,同心円状の小胞体(concentric ER)が合点極付近に必ず見られる。ホトトギスの珠心は薄層型(tenuinucellate)であるため,大胞子母細胞や二分子,四分子は珠心表皮細胞とこれ以外の珠心細胞に必ず接している。珠心表皮の細胞は表皮系を構成いる細胞であり,表皮以外の珠心細胞は基本組織系の細胞である。つまり,減数分裂期にある細胞は異なる組織系に属する細胞に接している。原形質連絡は,珠心表皮細胞との境界にはみられず,表皮以外の珠心細胞との境界にはかなりよくみられる。原形質連絡の不均一な分布については,大胞子の形成様式(単胞子性,二胞子性,四胞子性)と関係付けて議論されてきた(Kapil&Bhatnagar 1981)。原形質連絡の分布については,そのような議論に加えて,減数分裂期にある細胞が接する珠心細胞がどの組織系に属するかも考慮する必要があると思われる。本稿に使用したFig.2Aは藤嶺学園藤沢高等学校教諭永井規之君によって撮影されたもので,同君に感謝申し上げます。
- 1991-10-31
著者
-
佐藤 嘉彦
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
-
安藤 浩之
Department Of Biology Faculty Of Education Yokohama National University
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