ロシア極東・サハリン南部・プガチェボ地域のマストリヒチアン階アンモノイド化石群
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概要
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プガチェボ地域の白亜系蝦夷層群について,層序学的研究と古生物学的研究を行った.本層群は,下位からブイコフ層とクラスノヤルカ層に区分され,カンパニアン期中期からマストリヒチアン期の地層が露出する.ブイコフ層はカンパニアン期中期のCanadoceras kossmatiやSphenoceramus schmidtiで特徴づけられる.一方,クラスノヤルカ層中部と上部はマストリヒチアン期後期のPachydiscus flexuosusとGaudryceras makarovenseで特徴づけられる.ナイバ地域とマカロフ地域の間に位置する本セクションから,マストリヒチアン期後期を特徴づけるアンモノイド化石群が典型的に産出することが確認された.マストリヒチアン期後期のアンモノイド化石の保存状態は,世界的に見ても最良の部類に属し,他の南部サハリン各地における化石の保存状態を凌駕している.大型の石灰質ノジュール中から産するP.flexuosusとG.makarovenseの殻は,多くの場合アラレ石保存を示す.最後の2〜3の気室は,住房部と同様にわずかに圧密を受けているが,それ以外の気房部は圧密の影響を全く受けていない.また,殻の直径が5cm未満のP.flexuosusとG.makarovenseの幼年殻が,石灰質ノジュール中にも母岩の泥質砂岩中にも見られないことは注目に値する.この幼年殻の少なさは,単なる波浪や水流による淘汰,あるいは続成の過程における選択的な殻の溶解では説明できない.このような特異な現象は,化石化作用の解明と同様に,堆積環境やアンモノイドの古生態を復元する上で,重要な鍵となると考えられる.
- 国立科学博物館の論文
- 2005-12-28
著者
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前田 晴良
Department Of Geology And Mineralogy Graduate School Of Science Kyoto University
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重田 康成
Department of Geology and Paleontology, National Science Museum
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重田 康成
Department Of Geology And Paleontology National Science Museum
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前田 晴良
Department Of Geology And Mineralogy Division Of Earth And Planetary Sciences Graduate School Of Sci
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