カワヒバリガイとコウロエンカワヒバリガイ(イガイ科)の著しい遺伝的差異
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概要
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付着性二枚貝のカワヒバリガイLimnoperna fortunei fortunei (Dunker, 1856)とその亜種コウロエンカワヒバリガイL. fortunei kikuchii Habe, 1981はいずれもイガイ科カワヒバリガイ属の移入種である。前者は1990年代初めに日本の淡水域に移入し, 後者は1970年代に日本の内湾汽水域に移入した。コウロエンカワヒバリガイは, 殻の形態の違いをもとにカワヒバリガイの亜種とされた。しかし, これらは殻の色彩, 閉殻筋痕, 塩分濃度耐性が明らかに異なり, 別種の可能性が高いと指摘されてきた。今回, 同一河川内のこれら2種類についてアイソザイム分析を行い, 遺伝的分化程度を推定した。試料は岐阜県長良川流域の2地点において採集した。10酵素を用いて分析した結果, 14遺伝子座においてその遺伝様式を推定することができた。遺伝様式の推定できた14遺伝子座のうちAATを除く全ての遺伝子座において2種類間に対立遺伝子の置換がみられた。遺伝的距離はD=2.78と大きく, いずれの遺伝子座においても交雑個体と考えられる泳動像は観察されなかった。これらのことから2種類は別種と考えられる。集団内の遺伝的変異の程度を示す遺伝子多様度は, カワヒバリガイではHo=0.0048なのに対し, コウロエンカワヒバリガイではHo=0.0783とカワヒバリガイの方が有意に小さかった。この理由について考察した。
- 1997-04-30
著者
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木村 妙子
三重大学生物資源学部
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田部 雅昭
梅花中・高等学校
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田部 雅昭
梅花高等学校
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木村 妙子
Faculty Of Bioresources Mie University
-
木村 妙子
三重大学大学院生物資源学研究科
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