ヤマトシジミ幼生の成長および共存する二枚貝幼生との形態比較
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概要
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汽水性二枚貝ヤマトシジミは本邦における水産重要種である。本研究では,ヤマトシジミの人工産卵誘発によって得られた受精卵を15℃,20℃,25℃の温度条件で18日間飼育し,浮遊幼生,変態期幼坐,着底椎貝の成長と形態を観察した。ヤマトシジミの受精卵はトロコフォア幼生を経てD型幼生に成長するが,この幼生は後期ベリジャー幼生期にあたる殻頂期幼生にはならず,D型幼生の後期に足を発達させ,変態期幼生となって着底する。着底直後の稚貝の殻はD型であり,これはやがて殻頂をもつ殻に変わる。最も成長のよかった25℃の温度条件下では,受精後12日に平均殻長195μmに達し,ほとんどの個体が着底した。一方,15℃の温度条件下では実験終了まで着底個体は観察されなかった。本研究では野外の浮遊幼生や稚貝の試料の同定のために,ヤマトシジミの浮遊幼生と着底稚貝の形態を記載し,これらと本州河口干潟に優占する二枚貝類幼生(アサリ,ホトトギスガイ,イソシジミ,シオフキガイ,ハマグリ)の形態との比較をおこなった。浮遊幼生はD型幼生では大きさ以外の識別点は乏しい。それに対して着底稚貝では,ヤマトシジミの殻の周縁に形成される放射肋により,他の種とは明確に識別できる。
- 日本貝類学会の論文
- 2004-06-30
著者
-
関口 秀夫
Faculty of Bioresources, Mie University
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木村 妙子
Faculty Of Bioresources Mie University
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五月女 祐里奈
Faculty of Bioresources, Mie University
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五月女 祐里奈
Faculty Of Bioresources Mie University
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木村 妙子
三重大学大学院生物資源学研究科
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関口 秀夫
Faculty Of Bioresources Mie University
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