沖縄県鮮新世新里層産多歯類二枚貝の新属・新種 Ryukyuleda japonica

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沖縄本島中部勝連半島東部に分布する鮮新世新里層から多歯類二枚貝の新属・新種Ryukyuleda japonicaの報告を行なった。Ryukyuleda属は殻表面の前部と後部の一部を除き成長線に斜交する丸みのある隆起した肋, 殻頂部より後腹部端に達する緩やかな一つの稜, 後閉殻筋近くで僅かに弯入する套線, 丸みのある後端部, 三角形の靱帯溝の前後に背縁に沿った歯列を有すること等により特徴づけられる。このような多歯類二枚貝はこれまで日本周辺の化石・現生種には記録されていない。ところが, この新属に最も類似する属でアメリカ東部海岸の始新世Jackson期から提唱されたHilgardiaがある。この属はYoldia multilineataに基づいてHarris and Palmer (1946)が当初Yoldia属の亜属として提唱している。その特徴は後端部を除く殻表面全体に成長線に斜交した隆起肋, 複数本の後端部隆起稜, 先細そになる後端部, 深い套線の弯入等でRyukyuledaとは区別される。Hilgardia属に含まれるか, あるいはその子孫種と思われる種がアメリカ東部海岸やヴェネズエラの中新統からも産出しており, この系統の生物地理的分布には興味深いところがある。沖縄の新種にはその浅所潜入の生態を示す生息時の後背部周辺に潜入したClionoides sp., Talpina sp., や穿孔捕食痕のOichnus sp.あるいは魚のものと思われる噛み跡痕等の生痕化石が残されている。この産状から, 本種はnaticidにより穿孔捕食され死に至ったと推定されるが, 死後そのまま埋没化石化したと判断される。このことは, 本種が鮮新世の沖縄本島沖合泥質底で生息していたことを意味するものと考えられ, 今後このような大西洋起源と目される種の形態的進化あるいは移動経路について, かって筆者がHawaiarcaで検討したような意図で(Noda, 1986), 古生物地理的検討を行なう必要があろう。
1992-07-31

沖縄県鮮新世新里層産多歯類二枚貝の新属・新種 Ryukyuleda japonica

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