好酸球が増加する呼吸器疾患:好酸球性肺炎を中心に(総説,<特別企画>「好酸球疾患」)
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概要
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好酸球はWright染色で赤く染まる好酸性の顆粒を有する顆粒球の1つであり,直径13から20μmで好中球よりやや大きめの白血球である。北里大学病院での末梢血白血球分画中の好酸球の正常値は2.0〜6.0%である。好酸球増加は末梢血液中の好酸球数が500/mm^3以上と定義されているが,通常は末梢血白血球分画の割合で検査結果が報告されるため,白血球数が異常に増加している場合等では好酸球数が増加していても末梢血白血球分画上の好酸球の比率は正常範囲内であることもある。以前より好酸球はアレルギー性疾患および寄生虫疾患に関与していることが知られている。近年の研究成果により好酸球の分化・増殖や炎症巣への集積・遊走,そして好酸球が有する特異的顆粒蛋白の機能が明らかになってきた。major basic protein (MBP),eosinophil cationic protein (ECP), eosinophil peroxidase (EPO), eosinophil derived neurotoxin (EDN)などの好酸球顆粒蛋白は組織障害性を有しており,好酸球の病的な増加および局所浸潤は臓器障害を生じる可能性がある。末梢血液中の好酸球増加を伴う疾患や,病巣に好酸球の浸潤が認められる疾患は諸臓器にわたってみられる。呼吸器領域において末梢血液中の好酸球増加や病巣に好酸球の浸潤が認められる疾患としては気管支喘息が日常の臨床で最も頻度の多い疾患であるが,ほかにもアレルギー疾患であるアレルギー性気管支肺真菌症や,肺吸虫症などの寄生虫疾患,肉芽腫性疾患である好酸球性肉芽腫症,Wegener肉芽腫症,サルコイドーシス,その他bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia (BOOP),特発性肺線推症(IPF)などでも好酸球の増加や好酸球の浸潤を認めることがある。好酸球性肺炎はLoefflerによる末梢血の好酸急増多を伴う一過性肺浸潤(Loeffler症候群)の報告以来,いくつかのグループに分類されているが,そのグループ分けは時代とともに変化している。また,好酸球増加症候群(hypereosinophilic syndrome: HES)と呼ばれる原因が明らかでなく好酸球増加をともなう臓器障害を呈する疾患があるが,近年この疾患も好酸球性肺炎のグループに加えた分類が提唱されている。そこで,本稿では好酸球増多症候群を含めた最近の酸球性肺炎の分類について総説する。
- 北里大学の論文
- 2003-04-30
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