動脈硬化の防御をめざした高脂血症治療のストラテジー
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
2002年のWHOの報告にもあるように,近年動脈硬化を基盤とする心血管疾患は世界的規模で死因のトップを占めるようになっており,粥状動脈硬化の予防と治療は極めて重大な課題である。高脂血症に対する治療として食事療法や運動療法が重要であるが,効果が得られない場合には薬物療法が追加される。特に,高コレステロール血症に対して,HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)を中心とした薬物治療が広く行われるようになり,LDLコレステロール(LDL-C)の低下によって冠動脈硬化の発症や進展が抑制されたという一次予防・二次予防の大規模試験の成績が数多く得られてきた。我が国においても,いくつかのスタディーで,高脂血症に対する薬物治療の有効性と安全性が確認されてきた。高脂血症治療においては,冠動脈疾患の有無,冠危険因子の保有数が重要であり,特に内臓脂肪の蓄積を背景に同一個人に多くの危険因子が集積するマルチプルリスクファクター症候群は,極めて動脈硬化を発症しやすい基盤であり,我が国における虚血性心疾患の大きな背景となっている。このような観点から,動脈硬化の発症予防,治療の観点からは,LDL-Cの低下のみでなく,動脈硬化の種々の危険因子を取り除くことが重要であることは明白である。2002年9月には日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が発行され,実地医家に対しての指針が示され,広く用いられている。本稿では最近の高脂血症治療の進歩を概説し,動脈硬化の防御をめざした高脂血症治療のストラテジーについて述べたい。
- 日本保険医学会の論文
- 2003-09-17
著者
-
山下 静也
大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学
-
山下 静也
大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学
-
山下 静也
大阪大 大学院医学系研究科 循環器内科学
-
山下 静也
大阪大学大学院医学系研究科内科学講座循環器内科学
-
山下 静也
大阪大学大学院 医学系研究科 分子制御内科学
関連論文
- 脂質代謝とメタボリックシンドローム
- 脂質異常症治療(スタチン以外) (特集 循環器薬--個別に応じた適切な使用法) -- (各薬剤の適切な使用法)
- 冠動脈硬化症を早期に合併したシトステロール血症の1症例(第99回日本循環器学会近畿地方会)
- 41)高度な動脈硬化を呈した高HDL血症の2例
- 房室ブロックを呈した強直性脊椎炎の一例(第95回日本循環器学会近畿地方会)
- 急性心筋梗塞を発症したCrow-Fukase症候群の一例(第95回日本循環器学会近畿地方会)
- 113) 著明な起立性低血圧を認めたpure autonomic failureの一例
- 95)ミノサイクリンが有効であった大動脈炎症候群の1例(日本循環器学会 第92回近畿地方会)
- 106) VEGF高値を示した原発性アミロイドーシスの一例(日本循環器学会 第91回近畿地方会)
- shear stress 応答性cDNAの包括的単離と動脈硬化における役割の解明