膀胱癌におけるp53癌抑制遺伝子の異常 : 病理組織学的因子と予後との関係

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p53癌抑制遺伝子は,ヒト悪性腫瘍において最も多く異常の認められる遺伝子の一つである。今回われわれは,80例の膀胱癌におけるp53癌抑制遺伝子異常の有無について検討し,病理組織学的所見と予後との関連について検討したので報告する。80例の原発性膀胱癌について,polymerase chain reaction single strand conformation polymorphism (PCR-SSCP)法を用いて,p53遺伝子のエクソン4から8領域を解析するとともに,陽性例はdirect-sequencing法にて塩基配列の異常を解析した。p53癌抑制遺伝子のエクソン4から8の領域のPCR-SSCP解析では,80例中31例(38.8%)に変異異常が認められた。p53遺伝子の変異は年齢および性別と関連しなかったが,変異陽性群は変異陰性群に比して生存率が有意に低下していた(p=0.0029)。また,臨床病期的にはstage pTaが13例中3例(23.1%), pT1が27例中5例(18.5%), pT2が16例中7例(43.8%), pT3が15例中11例(73.3%), PT4が9例中5例(55.6%)にp53遺伝子変異が認められた。pTa-1群に比し, pT2〜pT4群は有意に陽性率が上昇した(p=0.0006)。Grade別ではgrade Iが17例2例(11.8%), grade IIが34例中11例(32.4%), grade IIIが29例中18例(62.1%)と, gradeが悪化するにつれて陽性率は増大した。特に, grade I群とgrade II〜III群間には陽性率に有意差が認められた(p=0.0114)。膀胱癌の発生・進展において,p53癌抑制遺伝子が関与していると考えられる。特に, p53癌抑制遺伝子変異は,主にhigh stage, high gradeの腫瘍に多く認められ,変異症例の術後生存率は変異のない症例に比し低下した。p53遺伝子診断は,従来のgrade,stage診断とともに予後規定マーカーとして有用と考えられる。
北里大学の論文
1998-06-30

膀胱癌におけるp53癌抑制遺伝子の異常 : 病理組織学的因子と予後との関係

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