授業場面における理解過程に関する研究(VI) : 文学作品を用いた教授・学習過程について
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概要
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文学作品「ごんぎつね」を読む場合,主人公「ごん」に視点を固定しながら読み進めるために,「反省・つぐない」,あるいは「共感」という枠組みの自生的理解は授業を通じても容易に変化しないことが指摘されている。そこで本研究では,「表象の書き換え(Reresentational Redescription)」(Karmiloff-Smith,1992)の考え方をもとにし,この作品についての「内的なシステムの安定性」を確保していると考えられる6年生(65名)を対象に実験授業をおこなった。実験授業の目的は擬人化された狐・「ごん」は人間の心を理解しながら「兵十」に接近する,一方現実の生活を営む「兵十」からみると「ごん」は生活界における獣であるという対比的構造に着目しながら読み進め,この両者の視点を組み込みながら全体理解を再構成することである。実験授業を通して,「ごん」を過度に擬人化して読み進めるという読みの方略が修正され,「ごん」は独りぼっちになった兵十に共感し,接近を図るが,「兵十」にとっては「ただのいたずらぎつね」と写ったために銃で撃たれるという理解を促進させた。この結果から,理解の構成は一定のスキーマによるトップダウンの形式によるとは限らず,視点の変更や新たな推論の積み上げによることが示唆された。
- 2003-12-25
著者
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