教室場面における理解過程に関する研究? : 文学作品と理解構成とその変化について
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概要
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すでに小林(1986,1989,1995,1996,1997)によっておこなわれてきた文学作品を対象とした授業場面における理解過程に関する研究の成果を継承しつつ, 課題を整理し, 同時に新たな視点を加えて展開しようとするものである。近年, 科学領域ではいわゆる素朴理論(naive theory)の様相とその性質が明らかにされ, その再構造化の過程が検討されてきた。一方, 文学作品の学習を考える場合の「事前の理解」とその変化の過程についてはそれらを捉える方法論の検討を含め, 十分になされてきたわけではない。そこで本研究では国語の文学教材『ごんぎつね(新美南吉)』を用い, 学習の最初の通読によって構成される理解を授業の「事前の理解」と仮定した上で小学4年生, 中学1年生のそれについて検討し, 合わせて理解の変化を累積的側面(accumulation)と理解構造の変換(structural change)という観点から考察することを目的とする。その結果, 小学生では本教材において作品中の登場人物の視点に固定して読み進めるために「同情」という枠組みで理解を構成する傾向が現れた。一方, 中学生では小学生とは異なる枠組みで理解を構成すると同時に, 自己の読みを対象化する活動もおこっていることが明らかとなった。本研究では学習者がすでに構成した理解構造は授業を通じても容易に変化しないという知見(小林, 1995,1997)をふまえながら, 読みの視点, さらに心の理論(theory of mind)という観点を加えて, 読みのその後の変化可能性について考察された。
- 札幌学院大学の論文
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