授業場面における理解過程に関する研究V : 文学作品の理解とその変化の可能性について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では,文学教材『ごんぎつね』を用い,特定の授業目標にもとづく教示をおこない,学習者の理解がいかに変化するか,その可能性について検討をおこなった。学習者の事前理解の特徴として,主人公の心情理解を生成する過程において,作品に登場する「きつね・ごん」に視点を重ね,しかもそこに固定してしまうこと,同時に動物を直ちに擬人化するという傾向があげられる。そこで本研究では,「野生のきつねの生態」に関する知識を与え,同時に「主人公の内側からの視点」に加え「物語の外側からの視点」に立つことを含む教示を与えた。その結果,作品の設定部における主人公の捉え方を再考するという効果をもたらしたが,読みの基本的な枠組み自体に大きな変化はみられなかった。一方で,「新たな枠組みにもとづく読み」について,「そのようにも読める」という形式での学習効果がみられた。こうした傾向は「他者の読み」を暫定的に取り入れたと解釈され,なお,その後の変化の過程をとらえるべきことが示唆された。考察において,文学作品の理解過程における登場する動物についての「脱擬人化」の問題と「読みの道具としての知識」の役割について検討された。
- 2003-03-20
著者
関連論文
- 授業場面における理解過程に関する研究(VII) : 文学作品の「一次読み」における予期推論と原文展開の統合について
- 大学生の心理学に関する「素朴概念」 : 本学人文学部生を対象にして
- 教授・学習6(639〜647)(部門別研究発表題目・質疑応答・討論の概要)
- 授業場面における理解過程に関する研究(VI) : 文学作品を用いた教授・学習過程について
- 授業場面における理解過程に関する研究V : 文学作品の理解とその変化の可能性について
- 755 文章理解におけるストーリィ・プラグマティクス(I)(文章理解(2),学習10,口頭発表)
- 721 授業場面における物語の理解過程に関する研究(その2)(文章理解・産出,学習3,口頭発表)
- 720 授業場面における物語の理解過程に関する研究(その1)(文章理解・産出,学習3,口頭発表)
- 633 授業場面における物語り理解の構造II(読解,学習5)
- 632 授業場面における物語り理解の構造I(読解,学習5)
- 教授過程 728 児童の文学教材の読解と社会的相互作用
- 教室場面における理解過程に関する研究? : 文学作品と理解構成とその変化について
- 子どもの理論構成とその変換過程について
- 教育における人間発達と学習研究の展望と課題(人間科学の現状と課題)
- 授業場面における理解過程に関する研究 (III) : 社会的相互作用における物語の理解構造変換の可能性
- 社会的構成論からみた知識の再構造化について
- 社会的構成論からみた知識の再構造化について
- 子どもの知識育成とその再構造化について
- 子どもの認知発達と学習 : ケアリーの「素朴理論」とその再構造化をめぐって
- 授業場面における理解過程に関する研究 (II) : 理解構造を媒介とした社会的相互交渉の分析
- 授業場面における理解研究の方法論に関する検討
- 授業場面における理解研究の方法論に関する検討
- 物語理解の構造とその形成過程に関する研究
- 授業場面における理解過程に関する研究(1) : 物語教材の理解構造とその表現
- 645 課題解決における内発的動機づけ(3) : 最適水準についての発達的検討(教授学習6,研究発表)
- 611 課題解決における内発的動機づけ(1)(教授・学習2,口頭発表)