歩行者とドライバーの行動特性に関するフィールド観察 : 予備的検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では、歩行者やドライバー(車)のフライングやかけ込みを社会的影響現象としてとらえ、(1)フライングやかけ込みの生起が、歩行者や車の数(集団密度)によってどのような影響を受けるか、(2)一人の歩行者、一台の車のフライングやかけ込みが、周囲の歩行者や車の追従行動にどのような影響を与えるか、について資料を得ることを目的にフィールド観察を行った。その結果、歩行者に関して、フライングは全観察回数240回のうち89回(37.1%)観察され、それに伴う追従フライングも59回(66.3%)観察された。かけ込みについては、全観察回数240回のうち77回(32.1%)観察され、うち追従かけ込みが29回(37.7%)観察された。このように一人の歩行者のフライングやかけ込みは、周囲の歩行者の行動にも少なからず影響を与えていると言えよう。フライングや追従フライングは、信号待ちの歩行者数による違いが大きく、集団密度が高く、歩行者の個人空間が侵害されやすい状況では生起率が高まることが示唆された。他方、かけ込みについては、歩行者の数による影響は認められなかったが、各地点の特徴を考察すれば、歩行者の急ぎやあせりといった個人的要因や状況的要因をかけ込みの原因として看過できない。また、かけ込みはフライングと比べて若年者に多いのが特徴であり、運動能力への自信や若者特有の衝動性といった面が影響しているものと考えられる。次に、ドライバー(車)の行動に関して、フライングは全観察回数120回のうち26回(21.7%)観察され、うち追従フライングは10回(38.5%)観察された。交通量の多さ(集団密度の高さ)といった点からは結果は明確でなかったが、状況的には本線(大道陸橋北交差点の国道10号線)に侵入する道路(同交差点の国道210号線)においてフライングの生起率が高く、信号待ちの時間の長さからくるイライラや、短い青信号の間に、少しでも早く発進しようとするドライバーの心理を反映しているものと考えられる。かけ込みについては、全観察回数120回のうち86回(71.7%)観察された。黄信号1秒以上のかけ込みに限っても56回(46.7%)となり、フライングに比べて生起率は高い。かけ込みは交通量の多い(集団密度の高い)地点で多く、しかも、かけ込みが観察された86回のうち、かけ込み車の前方に先行車がある場合が67回(77.9%)、後続に追従車がある場合が74回(86.0%)、先行車と追従車の両方が観察された場合が64回(74.4%)であった。このように車のかけ込みの原因は、一旦形成された車と車の密度と流れの中で、停止が困難になることが背景にあると考えられる。今回の観察の中で、とくに車のかけ込みは、重大事故につながりやすい行動であるだけに更なる検討が必要であろう。今後は、車と車の密度や流れに関する計量的指標を開発して、より詳細な分析を試みる必要がある。
- 1993-12-31
著者
関連論文
- 教育の場への応用のための防災SNSの考察
- 情報発信を中心にしたメディアリテラシーの育成と評価に関する実証的研究 (1) : マルチメディアリテラシーを中心に
- グループワークによる教育実習事後指導プログラムの開発 : 実習生は,子どもの声をどう受けとめたのか?
- グループワークを用いた教育実習事後指導プログラムの開発
- 社会 A-1 グループワークを用いた教育実習事前指導の効果
- グループ・ワークを用いた教育実習事前指導の効果
- 歩行者とドライバーの行動特性に関するフィールド観察 : 予備的検討
- 子どものためのロボティクス : 教育・療育支援における新しい方向性の提案
- 原子力発電所における安全風土に関する研究
- 働くことの意味に関する国際比較研究 : 5カ国の大学生の比較
- 看護専門学校におけるクラス担当教員のリーダーシップ : 行動測定尺度の作成とその妥当性
- PM理論に基づくリ-ダ-シップ・トレ-ニングの原子力発電所への導入--リ-ダ-シップ,モラ-ル,自己効力感の分析
- ロボットによる認知発達研究 : アンドロイドはヒトなのかモノなのか
- 友人関係における対人認知と好意の変化--友人関係ルールとの関連
- チンパンジーおよびオランウータンにおける刺激等価性 : 対称性の観点から
- 新奇刺激呈示下におけるチンパンジーの行動 : 実験者との係わり
- 「心」を理解する心 : メンタライジングの発達(環境物理学-先端境界領域の創出へ向けて-,京都大学基礎物理学研究所 研究会報告書(YITP-W-06-02))
- 地域防災SNSの研究開発--チャットを用いた予備実験
- 店舗の魅力は何で決まるか? : とくにブティックの場合
- 脳科学から考える自他理解の発達 (特集 自分を知ること、他者を知ること--社会性発達の科学的アプローチ)
- 組織成員の企業帰属意識の差異に基づくリ-ダ-シップ機能認知と効果性の分析
- 霊長類研究におけるコンピューターの活用
- 赤ちゃんから見た世界--発達科学の挑戦
- 地域防災SNSの研究開発--その基本構想
- 他者の心を理解する脳の仕組み (特集 他者の心を理解するには)
- 就学前児における話者の知識状態を考慮した新奇事物名称の指示対象決定 : 内容物変化の誤信念課題を用いて
- 地域住民の"信頼"と"人間関係"を基盤にした地域防災SNSの開発
- 地域住民の"信頼"と"人間関係"を基盤にした地域防災SNSの開発
- 自尊感情と友人とのネットワーク : 女子学生を対象にして
- 恋愛関係における愛情のスタイルと対人的ネットワーク
- 青年期の孤独感 : 孤独感と社会的傾性
- 基礎研究から発達支援へ--その理論的考察 (特集 発達の早期支援に向けて) -- (早期支援を見すえた発達研究)
- 特集 赤ちゃん研究の最前線--学際領域からの挑戦
- 社会的シグナル検出者としての赤ちゃん : その発達的変化
- 自己の認知、他者の理解 (特集 自分を知ること、他者を知ること--社会性発達の科学的アプローチ)
- 心理学の立場から : メンタライジングの発達
- 視線理解の生物的基盤・社会的基盤 (特集 視線認知の発達--学際的アプローチ)
- 言語獲得と社会的認知--小椋論文へのコメント (特集:子どもの言語獲得)
- 見いだされる意図 : 比較認知発達科学からのアプローチ(意図研究のスペクトル)
- 成り立つ心--赤ちゃんの心の発達 (特集「心の科学」)
- 霊長類の比較発達心理学(70)自分を知ること、他者を知ること
- 成人看護1モーニングセミナー(大分) チンパンジーを見てヒトを知る--情動反応を中心にして (第31回日本看護学会 特別講演・シンポジウム集録号)
- 心を読む : 比較認知発達の視点から
- グループ体験学習による授業実践 : 学習活動の興味・関心度について
- 視線読み取りの比較・進化心理学 : 視線知覚・共同注意・心の理論(シンポジウム1「読む眼・読まれる眼-視線知覚を通して見る心の源流-」,VI.第18回大会シンポジウム)
- 霊長類における「自己」 : 実験心理学の立場から(身体性/知性の発達,複雑系5)
- P-2-9 チンパンジーにおける指示行動の代替 : 予備的検討(日本動物心理学会第56回大会発表要旨)
- ヒト新生児およびチンパンジー乳児のManual Action(日本動物心理学会第54回大会発表要旨)
- 霊長類研究と発達心理学 : 比較認知学の視点から
- 能動的触覚による形の知覚 : 眼球運動との関係
- PC48 グループ体験学習が社会的スキルと孤独感に及ぼす効果(社会,ポスター発表C)
- 組織の安全風土--組織事故の背景を探る (特集 組織の安全と人間)
- グループ体験学習による参加者の社会的スキルの開発
- J-008 地域防災SNSの開発(HCI(1),J分野:ヒューマンコミュニケーション&インタラクション)
- PC047 集団による情報共有課題における不確定志向性の効果(ポスター発表C,研究発表)
- 26-J-19 学校の組織力向上に関する社会心理学的研究(自主企画)
- TEACHING ORDINALS TO A CARDINAL-TRAINED CHIMPANZEE