非行的態度の抑制要因に関する研究(I)
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概要
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非行に対する態度を抑制する要因を明らかにすることを目的に,青少年の非行的態度の背景にある,道徳意識,価値観,恥意識,罪悪感,そして,親子関係についてその構造を検討するための調査を行った。調査は,北海道,青森,東京,沖縄の4都道県における10校(中学校6校,高等学校4校)で実施された。調査対象者は中学校2年生と高校2年生合計1026名である。因子分析の結果,「恥意識」も「罪悪感」も,どちらも自分自身にかかわる気持ちと,他者を意識した気持ちという,自己一他者という意識構造を持つことがわかった。「虞犯行為に対する罪意識」と「刑法犯行為に対する罪意識」の2因子を従属変数とし,恥意識,罪悪感,価値観,親子関係の因子を説明変数とする重目縁分析を行った。結果は他律的恥意識と他者を意識した罪悪感が非行に対する意識に対して相対的に強く影響し,価値観と親との心理的距離は相対的に弱い影響にあることが示唆された。他方,親との心理的な距離や価値観は,非行に対する意識には直接影響する要因ではないとも考えられるため,「虞犯行為に対する罪意識」と「刑法犯行為に対する罪意識」を従属変数とした,共分散構造分析のパス解析モデルを適用した分析を行った。この結果,他律的恥意識の非行に対する罪意識への影響が確認できた。また,価値観については,「他者志向」が2つの恥意識に対する影響が認められた。そして,「他律的恥意識」に対しては,「母親に対する親近感」が最も影響があった。これらのことから,他者や社会に目を向けるが,恥という意識をつくり,そしてそれが非行や犯罪に対する抑止力となると思われる。そして,親の役割の大切さも示唆された。さらに,「母親との心理的距離」の影響が中高や男女で大きく異なり,これは,恥意識の形成のメカニズムに関連があるのではないかという新たな課題を発見することができた。
- 2005-03-15
著者
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