ソメイヨシノの液体培養細胞から単離したプロトプラストの培養
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概要
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ソメイヨシノにおけるプロトプラストから幼植物体への再生系を確立するための最初のステップとして、葉柄および果柄から液体培養細胞を誘導し、その後のプロトプラストの単離に使用した。更に、成長パラメーターである圧縮細胞量、生重量および絶乾重量を用いて、それらの成長特性を明らかにした。液体培養細胞の対数増殖期は、葉柄では培養開始後4日から16日目、そして果柄では8日から16日目であった。葉柄由来の液体培養細胞からカルスを誘導するための最適培地は、10μM NAA+10μM CPPUまたは10μM 2, 4-D+10μM CPPUを含むB5培地であった。両液体培養細胞を用いて、プロトプラストの単離および培養を行った。葉柄では、プロトプラスト単離用の最適酵素溶液は、1%セルラーゼオノズカRS+1%ドリセラーゼ20+1%ヘミセルラーゼ+0.5%ペクトリアーゼY-23で、それによって高収量 (3.7×10^7個/g生重量) で高生存率 (91%) のプロトプラストが得られた。1%セルラーゼオノズカRS+1%ヘミセルラーゼ+0.5%ペクトリアーゼY-23の組合せを用いて、果柄由来の液体培養細胞から効果的にプロトプラストを単離することが出来た。その場合の収量と生存率は、それぞれ3.0×10^6個/mLと90%であった。0.1〜10μM NAAまたは2, 4-DとCPPU (1, 10μM) の組合せを含むMMS培地を用いて1×10^4個/mLの細胞密度で培養した場合、葉柄由来の液体培養細胞のプロトプラストからマイクロコロニーを効果的に形成させることが出来た。これをNAA (1, 10μM) とBAP (1, 10μM) またはCPPU (1, 10μM) の組合せを含むMMS培地で培養すると、継続的にマイクロカルスが増殖した。果柄においては、NAA (0.1〜10μM) または2, 4-D (0.1〜10μM) およびCPPU (1, 10μM) の組合せを含むMS培地を用いて、細胞密度1×10^4個/mLでプロトプラストを培養することによって、マイクロコロニーが効果的に形成した。また、10μM NAA+10μM BAP, 10μM NAA+10μM CPPU, 1μM 2, 4-D+1μM CPPUおよび1μM 2, 4-D+10μM CPPUの組合せを含むMS培地を用いることによって、マイクロカルスを得ることが出来た。さらに、10μM NAAと10μM BAPを含む固体MS培地 (0.8%寒天) で培養することによって、カルスの形成と増殖が見られた。本研究ではまた、葉柄および果柄由来の液体培養細胞から単離したプロトプラストにおける内性ABAの予備定量を行った。各プロトプラスト中のABA含量は、それぞれ葉柄で5.0 pmol/mg絶乾重量、果柄で0.9 pmol/mg絶乾重量であり、葉柄が果柄よりも約5倍多いABAを含んでいた。この結果は、両プロトプラストがポプラなどの他の木本植物に比べて、比較的多い内性ABAを含んでいることを示している。他の植物ホルモンとの相互作用を明らかにするために、外性ABAがプロトプラストの成長に及ぼす影響についても検討した。その結果、低濃度のABAまたはGA_3を含む培地で葉柄プロトプラストからのマイクロコロニーの形成が観察された。一方、果柄のプロトプラストでは、ABAまたはGA_3を含む培地でマイクロコロニーは形成しなかった。
- 宇都宮大学の論文
- 2005-03-31
著者
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横田 信三
宇都宮大学農学部森林科学科
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吉澤 伸夫
宇都宮大学農学部森林科学科
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吉澤 伸夫
宇都宮大学農学部
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横田 信三
宇都宮大学農学部
-
三木 俊英
宇都宮大学農学部森林科学科森林資源利用学研究室
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笹本 浜子
横浜国立大学大学院環境情報研究院環境遺伝子工学分野
-
笹本 浜子
横浜国立大学大学院環境情報学府
-
笹本 浜子
農林水産省森林総合研究所
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吉澤 伸夫
宇都宮大学森林科学科
-
横田 信三
宇都宮大学森林科学科
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